学生・教職員からのシステム問い合わせ対応を効率化!大学事務のためのDXツール活用術
大学事務の日常:システムに関する問い合わせ対応の負担
大学の事務室には日々、学生や教職員から様々な問い合わせが寄せられます。その中でも、学内システムに関する問い合わせは少なくありません。例えば、「ポータルサイトにログインできない」「履修登録システムの使い方を知りたい」「メールパスワードを忘れた」といった、定型的でありながら一つ一つに対応する時間が必要なものが多くを占めているのではないでしょうか。
これらの問い合わせに対して、電話やメール、あるいは窓口で都度対応することは、多くの事務職員の方々にとって大きな負担となっているかもしれません。対応に時間を取られ、本来集中したい業務が進まない、担当者によって回答内容にばらつきが出る、といった課題を感じている方もいらっしゃるかと思います。
このようなシステム問い合わせ対応の効率化は、大学全体のDX推進において重要な課題の一つです。ここでは、大学事務のシステム問い合わせ対応を効率化し、負担を軽減するためのDXツール活用方法についてご紹介します。
システム問い合わせ対応の現状と課題
学生や教職員からのシステムに関する問い合わせには、主に以下のようなものがあります。
- アカウント・ログイン関連: パスワード忘れ、アカウントロック、ログイン方法が分からない。
- システム操作関連: 特定の機能の使い方、エラーメッセージの原因と対処法。
- システム連携関連: 別のシステムとの連携方法が分からない。
- トラブルシューティング: 動作が遅い、画面が表示されない。
これらの問い合わせに対し、事務職員は情報を探し、分かりやすく説明し、場合によってはシステム部門との連携を取る必要があります。このプロセスに時間を取られるだけでなく、問い合わせが集中する時期には対応しきれず、待ち時間や対応遅延が発生することもあります。また、特定の担当者に問い合わせが集中し、その担当者が不在の場合に対応が滞るなど、属人化のリスクも存在します。
DXによる解決策と具体的なツール
システム問い合わせ対応の課題を解決するために、DXツールを活用した様々なアプローチが考えられます。
1. FAQ(よくある質問)システムの活用
最も基本的なアプローチの一つが、FAQシステムを整備することです。よくある質問とその回答をまとめたデータベースを構築し、学生や教職員が自分で情報を検索できるようにすることで、問い合わせの一次対応を自動化できます。
- 導入メリット:
- 学生・教職員が自己解決できるようになり、問い合わせ件数が削減されます。
- 事務職員の対応負担が軽減されます。
- 情報の一元化により、回答の正確性が向上します。
- 24時間いつでも情報提供が可能になります。
- 構築・運用のポイント:
- 過去の問い合わせ履歴から、よくある質問や解決に時間がかかる質問を収集します。
- ターゲット(学生向け、教職員向けなど)に合わせて、平易で分かりやすい言葉で回答を作成します。必要に応じて画像や動画も活用します。
- キーワード検索機能を充実させ、ユーザーが目的の情報に素早くたどり着けるようにします。
- 情報の鮮度を保つため、定期的な更新体制を整備します。
- 具体的なツール例:
- 一部の学内ポータルシステムやグループウェアにFAQ機能が備わっています。
- 専用のFAQシステムや知識管理ツール(例えば、Confluence、Kboostなど)の導入も選択肢となります。
2. チャットボットの活用
FAQシステムと連携させたり、単独で導入したりすることで、よりインタラクティブな一次対応を実現できるのがチャットボットです。特に定型的な質問に対する即時応答に強みを発揮します。
- 導入メリット:
- ユーザーは簡単な質問に対し、待たずにすぐに回答を得られます。
- 夜間や休日でも対応が可能になり、ユーザー満足度が向上します。
- 事務職員はより複雑な問い合わせや個別対応に集中できます。
- 問い合わせ内容の傾向分析に役立ちます。
- シナリオ設計のポイント:
- チャットボットで対応する質問の範囲を明確に定義します(例: パスワードリセット方法、〇〇システムへのログイン方法など)。
- 定型的な質問への回答シナリオを丁寧に作成します。
- チャットボットで解決できない複雑な問い合わせの場合、担当者へのエスカレーション(問い合わせフォームへの誘導、メールでの問い合わせ先表示など)にスムーズにつなげる仕組みが必要です。
- 具体的なツール例:
- Microsoft TeamsやGoogle Chatと連携できるチャットボットツール。
- 外部の専用チャットボットサービスで、学内システム情報と連携可能なもの。
3. マニュアル・ナレッジベースの整備と共有
学内システムの操作方法やトラブルシューティングに関するマニュアル、あるいは事務職員向けのナレッジベースをデジタルで整備し、共有することも重要です。これにより、担当者間の情報格差をなくし、誰でも迅速かつ正確な回答ができるようになります。
- 導入メリット:
- 担当者間の情報共有が促進され、問い合わせ対応の属人化を防ぎます。
- 新人職員でもマニュアルを参照しながら対応できるようになります。
- 回答のばらつきがなくなり、品質が向上します。
- 問い合わせ対応以外の業務にもマニュアルが活用できます。
- 整備のポイント:
- システムごとに体系的に情報を整理します。
- 初心者でも理解できるよう、手順を追って丁寧に記述します。スクリーンショットや動画マニュアルも有効です。
- 関係者全員が容易にアクセス、検索できる場所に保存します(学内限定のクラウドストレージ、共有ドライブなど)。
- システムアップデートに合わせてマニュアルを更新するルールを定めます。
- 具体的なツール例:
- Google DriveやMicrosoft SharePointといったクラウドストレージ。
- Wiki形式で情報を構築できるツール(例えば、Confluence、Notionなど)。
4. 問い合わせ管理システムの導入
寄せられる問い合わせを一元的に管理し、対応状況や履歴を可視化するためのシステムです。
- 導入メリット:
- 全ての問い合わせ対応状況(未対応、対応中、完了)を把握できます。
- 担当者への適切な振り分けや、対応遅延の防止に役立ちます。
- 過去の対応履歴を参照し、スムーズな引継ぎや重複対応の回避が可能です。
- 問い合わせの種類や量、解決にかかる時間などを分析し、さらなる改善に活かせます。
- 活用ポイント:
- 問い合わせの受付チャネル(メール、フォームなど)をシステムに集約します。
- 問い合わせ内容に応じて担当グループへ自動で振り分ける設定を行います。
- よくある質問へのテンプレート回答を作成しておくと、返信の手間が省けます。
- 具体的なツール例:
- 学内ヘルプデスク運用を想定した問い合わせ管理専用ツール。
導入・推進のステップとヒント
これらのツールを導入し、システム問い合わせ対応のDXを進めるためには、いくつかのステップがあります。
- 現状把握: どのようなシステムについて、どのような問い合わせが多く寄せられているか、記録を取り現状を把握します。
- 課題の特定: 問い合わせ対応のプロセスにおける具体的な課題(時間がかかる、情報が見つからない、担当者が限定されるなど)を特定します。
- 目標設定: DXによって何を達成したいか(例: 問い合わせ件数〇%削減、一次対応時間〇分短縮)具体的な目標を設定します。
- ツール選定: 課題と目標に基づき、最も効果的なツール(FAQ、チャットボット、ナレッジベース、問い合わせ管理システムなど)を選定します。複数のツールを組み合わせて活用することも考えられます。
- スモールスタート: 全てのシステムや全ての問い合わせに対応しようとせず、まずは特定のシステムに関する問い合わせや、特に件数の多い定型的な質問から対応を自動化するなど、小さく始めることを検討します。
- コンテンツ作成・整備: 選定したツールに合わせて、FAQの質問・回答、チャットボットのシナリオ、マニュアルなどのコンテンツを作成・整備します。
- 利用者への周知: 学生・教職員に対して、新しいFAQシステムやチャットボットが導入されたこと、マニュアルがどこにあるかなどを丁寧に周知し、利用を促進します。
- 効果測定と改善: 導入後、問い合わせ件数の変化や利用状況を測定し、コンテンツの改善やシナリオの見直しを継続的に行います。
まとめと次のステップ
学内システムに関する問い合わせ対応の効率化は、大学事務の負担を軽減し、より重要な業務に注力するための有効な手段です。FAQシステム、チャットボット、デジタルマニュアル、問い合わせ管理システムといったDXツールを活用することで、学生や教職員の自己解決を促進し、対応品質を向上させることができます。
まずは、日々寄せられる問い合わせの中で「これはDXで効率化できそうだ」と感じるものをリストアップすることから始めてみてはいかがでしょうか。そして、その中で最も負担が大きい、あるいは件数が多いものについて、どのようなツールが有効かを検討してみてください。小さな一歩からでも、着実にシステム問い合わせ対応のDXを進めることは可能です。
より詳しいツールの情報や、他の大学での具体的な導入事例について、この「大学DX推進ラボ」で今後ご紹介していく予定です。