手入力の負担を減らす!大学事務のOCRで書類データ化を効率化
大学事務における書類データ入力の課題
大学事務の現場では、申請書、アンケート、各種届出など、紙の書類を扱う機会が依然として多く存在します。これらの紙の書類に記載された情報を、Excelやデータベース、システムに手入力する作業は、多くの時間と労力を必要とし、入力ミスが発生するリスクも伴います。日々の定型業務の中で、このデータ入力作業に負担を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
このような課題を解決し、業務効率を飛躍的に向上させる技術の一つに、「OCR(オーシーアール)」があります。
OCRとは何か? 大学事務で活用するメリット
OCRとは、「Optical Character Recognition(光学文字認識)」の略称です。スキャンした画像データやPDFファイルに含まれる文字を識別し、編集可能なテキストデータに変換する技術を指します。
大学事務においてOCRを活用することで、以下のような具体的なメリットが期待できます。
- データ入力時間の短縮: 紙の書類に記載された文字を自動でテキストデータに変換するため、手入力にかかる時間を大幅に削減できます。これにより、より重要度の高い業務に時間を充てることが可能になります。
- 入力ミスの削減: 人手による入力作業では、どうしても入力ミスや見落としが発生する可能性があります。OCRを利用することで、これらのヒューマンエラーを減らし、データの正確性を高めることができます。
- 情報の検索性向上: 紙の書類は保管スペースを必要とし、必要な情報を探し出すのに時間がかかります。OCRでテキストデータ化することで、ファイル名をつけたり、内容で検索したりすることが容易になり、必要な情報へ迅速にアクセスできるようになります。
- ペーパーレス化の推進: 紙媒体で受け付けた書類も、スキャンしてOCR処理することでデジタルデータとして管理できます。これにより、紙の消費量を減らし、保管コストの削減や環境負荷の低減にも貢献します。
どのような書類でOCRを活用できるか
大学事務でOCRの活用を検討できる書類には、様々なものがあります。
- 各種申請書・申込書: 学生や教職員から提出される定型的な申請書や申込書(例: 科目登録申請書、証明書交付願、施設利用申請書など)の内容をデータ化し、システムへ連携する。
- アンケート用紙: 学生や保護者から回収したアンケートの自由記述部分や選択肢の回答をテキスト化し、集計作業を効率化する。
- 領収書・請求書: 経費精算に関連する書類をスキャンし、金額や日付、発行元などの情報を自動で読み取り、経費精算システムへ入力する。
- 学内文書・規程: 過去に作成された紙媒体の学内文書や規程集をスキャンし、テキストデータ化して検索可能なアーカイブを作成する。
- 名簿・リスト: イベント参加者リストや会議出席者リストなど、手書きや印刷された名簿をデータ化する。
これらの書類の中から、特にデータ入力頻度が高いものや、手入力に時間がかかっているものから試してみるのが良いでしょう。
OCRツールの種類と選び方のヒント
現在、様々な種類のOCRツールが提供されています。大学事務での利用を想定した場合、いくつかの選択肢が考えられます。
- 複合機・スキャナー付属のOCR機能: 多くの最新の複合機やドキュメントスキャナーには、スキャンと同時にOCR処理を行い、検索可能なPDFを作成する機能が搭載されています。日常業務で既に利用している機器の機能を確認してみるのも良い方法です。
- PCインストール型ソフトウェア: パソコンにインストールして使用するタイプのOCRソフトウェアです。高精度な読み取りや、より詳細な設定が可能なものがあります。
- クラウド型OCRサービス: インターネット経由で提供されるサービスです。ソフトウェアのインストールが不要で、インターネット環境があればどこからでも利用できる点がメリットです。API連携により、他のシステムと連携できるものもあります。
- スマートフォンアプリ: スマートフォンのカメラで書類を撮影し、OCR処理を行うアプリです。手軽に利用できますが、大量の書類処理には向かない場合があります。
ツールを選定する際は、以下の点を考慮すると良いでしょう。
- 読み取り精度: 読み取りたい書類の種類(手書き文字が多いか、活字か、表を含むかなど)に対して、どの程度の精度で読み取れるかを確認します。無料トライアルなどを利用して、実際に試してみることを推奨します。
- 対応言語: 日本語だけでなく、英語など多言語の書類を扱う場合は、対応言語を確認します。
- 出力形式: テキストデータ以外に、ExcelやCSV、Wordなど、どのような形式で出力できるか確認します。既存のシステムと連携させる場合は、連携しやすい形式を選びます。
- 処理速度と容量: 処理したい書類の量や頻度に見合った処理能力があるか確認します。
- セキュリティ: 機密性の高い情報を扱う場合は、データの保管場所や暗号化など、セキュリティ対策が十分に講じられているか確認します。特にクラウド型サービスの場合は、大学の情報セキュリティポリシーに適合するかを確認することが重要です。
- コスト: 無料ツールから有料サービスまで様々です。利用頻度や必要な機能に応じて、予算に合ったツールを選びます。
OCR導入・活用のためのステップと注意点
OCRの導入は、必ずしも大掛かりなシステム変更を伴うものではありません。まずは部署内など小規模な範囲で試してみることから始めるのが現実的です。
- 課題の特定: OCRを活用したい具体的な業務(例: ○○申請書のデータ入力、△△アンケートの集計など)を特定します。
- 試行: 無料ツールやトライアル版を利用して、実際に書類をスキャンし、読み取り精度や使い勝手を確認します。複数のツールを比較検討するのも良いでしょう。
- 効果測定: 試行期間中に、OCRを活用した場合と手入力で行った場合の作業時間やミスの発生状況などを比較し、効果を測定します。
- 本格導入の検討: 効果が確認できれば、部署内での本格導入や、全学的な展開について検討します。予算確保や、情報システム部門との連携が必要になる場合もあります。
- 職員への周知とトレーニング: 利用する職員にツールの使い方を周知し、必要に応じて簡単な操作トレーニングを行います。
導入・活用の際の注意点としては、OCRは万能ではないことを理解しておくことが重要です。
- 読み取り精度は100%ではない: 特に手書き文字や、書類の状態が悪い場合、複雑なレイアウトの書類などは、誤認識や読み取りエラーが発生することがあります。OCR処理後には、必ず目視での確認と修正作業が必要になります。この確認・修正作業の時間も考慮に入れておく必要があります。
- 個人情報や機密情報の取り扱い: 学生の個人情報や教職員の機密情報を扱う場合は、セキュリティ対策が十分に講じられているツールを選び、データの取り扱いに細心の注意を払う必要があります。学内の情報セキュリティポリシーや個人情報保護に関する規程を遵守することが必須です。
まずは小さな一歩から
紙の書類のデータ入力は、大学事務の日常業務の中で地味ながらも大きな負担となりがちです。OCR技術を活用することで、この負担を軽減し、より効率的に業務を進めることが可能になります。
「新しいツールは難しそう」「使いこなせるか不安」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、まずは手元にある複合機のOCR機能を使ってみたり、無料のOCRツールをパソコンで試してみたりするなど、小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。実際に触れてみることで、その便利さや効果を実感できるはずです。
データ入力の効率化は、DX推進の第一歩となり得ます。ぜひ、日々の業務の中にOCRの活用を検討してみてください。