大学事務の備品購入・管理が変わる!申請から棚卸しまでを効率化するDX入門
大学事務における備品購入・管理の現状と課題
大学の運営において、備品購入やその後の管理は不可欠な業務です。しかし、このプロセスには様々な非効率や負担が存在することが少なくありません。例えば、次のような課題を抱えている現場は多いのではないでしょうか。
- 申請・承認手続きの煩雑化: 購入申請書が紙で回覧され、承認までに時間がかかる、どこで滞留しているか分からないといった状況
- 発注業務の負担: 複数の業者からの見積もり取得、手作業での発注書作成・送付、納期管理
- 物品情報の管理不足: 誰がどの物品を使用しているか不明確、在庫状況が正確に把握できていない、紛失や破損に気づきにくい
- 資産管理の非効率: 固定資産や消耗品の台帳がExcelなどで手入力・管理されており、更新漏れや誤記が発生しやすい
- 棚卸し作業の負担: 年に一度などの棚卸し作業に多大な時間と労力がかかる
これらの課題は、業務効率の低下を招くだけでなく、物品の適切な管理やコスト削減の妨げとなる可能性も否定できません。
備品購入・管理業務をDXで効率化するアプローチ
これらの課題を解決するために、DX(デジタルトランスフォーメーション)の考え方を取り入れることが有効です。特定のツールやシステムを導入するだけでなく、業務プロセス全体を見直し、デジタル技術を活用して効率化・最適化を目指します。具体的には、以下のようなアプローチが考えられます。
- 申請・承認プロセスのデジタル化: 紙の申請書を廃止し、ワークフローシステムなどを導入することで、申請から承認までの流れをオンラインで行えるようにします。
- 購買・発注管理の一元化: 購買管理機能を持つシステムやツールを活用し、見積もり比較、発注、納期管理を一つのプラットフォーム上で行います。
- 物品情報の可視化と管理: 物品一つ一つに固有のIDやバーコードを付与し、データベースで一元管理することで、使用者、設置場所、購入日、金額などの情報を容易に把握できるようにします。
- 資産管理台帳の自動化: 物品情報のデータベースと連携し、固定資産台帳や消耗品台帳を自動生成・更新できるようにします。
- 棚卸し作業の効率化: バーコードリーダーやスマートフォンアプリを活用し、手入力や目視確認に頼らない効率的な棚卸しを実現します。
活用できる具体的なDXツールと機能
これらのアプローチを実現するために、様々なデジタルツールを活用することができます。大学の規模や既存システムによって最適な選択肢は異なりますが、汎用的なツールや機能を組み合わせることで効果を得ることも可能です。
-
ワークフローシステム:
- 購入申請書のテンプレート作成とオンライン入力
- 設定された承認ルートに基づいた自動回覧
- 承認状況の見える化とリマインダー機能
- 過去の申請履歴の検索・参照
- (例: サイボウズOffice, Agiloft, 各社提供のクラウド型ワークフローサービスなど)
-
資産管理・備品管理ツール/システム:
- 物品情報の登録(品名、型番、購入日、金額、使用者、設置場所など)
- 固有IDやバーコード/QRコードの自動生成・印刷
- 物品ごとの貸出・返却履歴管理(物品貸出がある場合)
- 修理・メンテナンス履歴の記録
- 固定資産台帳、消耗品台帳の自動生成・出力
- スマートフォンアプリ等を利用した棚卸し機能
- (例: 各社提供の資産管理システム、あるいはkintoneのようなノーコードツールで自作)
-
購買管理システム:
- 見積もり依頼・受領機能
- 発注書の自動作成・送付
- 請求書との照合機能
- 契約情報との紐付け
- (例: 各社提供の購買管理システム)
-
クラウドストレージ・共有フォルダ:
- 購入時の見積書、請求書、納品書などの関連書類の電子データ保管
- 物品ごとのフォルダを作成し、関連書類を一元管理
- 関係者間での情報共有
- (例: Google Drive, OneDrive, Dropbox Businessなど)
これらのツールを単独で導入するだけでなく、それぞれの機能を連携させることで、申請から購入、受領、管理、棚卸しまでの一連のプロセスをよりスムーズに連携させることが理想的です。例えば、ワークフローシステムで承認された購入情報が自動的に資産管理ツールに連携され、物品情報の登録の手間が省けるといった連携です。
DX導入のステップと成功のポイント
備品購入・管理業務のDXを成功させるためには、以下のステップを踏むことが重要です。
- 現状業務の可視化と課題の洗い出し: 現在の備品購入・管理プロセスを詳細に書き出し、ボトルネックとなっている箇所や非効率な作業を特定します。関係者(申請者、承認者、管理者など)からヒアリングを行うことも有効です。
- 目的とゴールの設定: DXによって何を達成したいのか(例: 申請・承認時間の短縮、棚卸し時間の削減、コストの削減、正確性の向上など)を明確に定義します。
- 必要な機能とツールの検討: 洗い出した課題解決と目的達成のために、どのような機能が必要か、それを実現できるツールは何かを検討します。既存の学内システムとの連携も考慮します。
- スモールスタートと段階的な導入: 全てのプロセスを一気にデジタル化するのは負担が大きいため、まずは購入申請・承認など一部のプロセスからデジタル化を試みるなど、スモールスタートで効果を確認しながら段階的に導入を進めることを推奨します。
- 関係者への周知と研修: 新しいツールやプロセスについて、関係者(教職員、事務職員など)への丁寧な説明と操作研修を実施します。操作マニュアルの整備も重要です。
- 運用後の効果測定と改善: 導入効果を定期的に測定し、当初の目的が達成できているかを確認します。利用者のフィードバックを収集し、運用方法やツールの設定を継続的に改善していきます。
DXによるメリット
備品購入・管理のDXを推進することで、大学事務には以下のような具体的なメリットがもたらされます。
- 業務時間の削減: 紙の回覧や手入力、在庫確認、棚卸しにかかる時間を大幅に削減できます。これにより、より戦略的な業務に時間を割くことが可能になります。
- コスト削減: 印刷費や郵送費の削減、物品の重複購入や不要在庫の削減につながる可能性があります。
- 正確性の向上: 手作業による入力ミスや転記ミスを減らし、正確な物品情報や資産情報を管理できるようになります。
- 情報の見える化: 物品の購入履歴、使用者、設置場所、在庫状況などがデータとして蓄積され、いつでも確認できるようになります。これにより、計画的な購入や適切な配置が可能になります。
- 管理負担の軽減: 煩雑な台帳管理や棚卸し作業の負担が軽減され、精神的な負荷も減らすことができます。
まとめ:まずは現状把握から一歩を踏み出す
備品購入・管理業務のDXは、一見複雑に思えるかもしれません。しかし、まずは現在の業務フローを丁寧に棚卸しし、どのような課題があるのかを関係者と共有することから始めてみてください。
現状の課題が明確になれば、それを解決するためのデジタルツールの活用方法が見えてきます。全ての業務を一度にデジタル化する必要はありません。小さなステップからでも良いので、DXによる効率化の可能性を探り、備品購入・管理業務をよりスマートで効率的なものに変えていきましょう。
このサイトでは、大学事務の様々な業務におけるDX事例や具体的なツールの活用方法を紹介しています。他の記事も参考にしながら、自大学に合ったDX推進のヒントを見つけていただければ幸いです。