大学DX推進ラボ

確実かつ効率的に!大学事務の学内情報発信DX

Tags: 大学DX, 学内情報発信, 情報伝達, 効率化, 大学事務

大学事務における学内情報発信の重要性と課題

大学事務にとって、学生や教職員への正確かつタイムリーな情報伝達は非常に重要な業務の一つです。休講情報、イベント案内、各種手続きの締め切り、学内の施設利用ルール変更など、日々多岐にわたる情報が飛び交います。これらの情報が適切に伝わらないと、学内運営に支障をきたすだけでなく、学生や教職員からの問い合わせ増加、手続き遅延、誤解によるトラブルなど、様々な問題を引き起こす可能性があります。

しかし、多くの大学では、情報発信の方法が多岐にわたり、煩雑化しているという課題を抱えています。紙の掲示物、学内ポータルサイトのお知らせ、メール、さらには学部ごとのウェブサイトやSNSアカウントなど、チャネルが分散しがちです。

こうした状況では、

これらの課題は、大学事務職員の業務負担を増大させ、より重要な業務に時間を割けない状況を生み出しています。

DXによる学内情報発信の変革

このような学内情報発信の課題は、デジタル技術を活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)によって解決へと導くことが可能です。情報発信におけるDXとは、単にデジタルツールを使うことではなく、情報伝達のプロセス全体を見直し、デジタル技術を活用してより効率的で、より確実な情報伝達の仕組みを構築することを目指します。

具体的には、以下のような変化が期待できます。

これらの変化は、大学事務職員の日常業務における負担を軽減し、学生や教職員の満足度向上にもつながります。

学内情報発信DXに役立つ具体的なツールと活用例

それでは、具体的にどのようなツールが学内情報発信のDXに役立つのでしょうか。大学事務の現場で活用しやすいツールと、その活用例をご紹介します。

1. 学内ポータルサイト/情報基盤システム

多くの大学には、学生・教職員向けのポータルサイトや、各種情報を集約した情報基盤システムがあります。これを学内情報発信の「ハブ」として活用することが基本となります。

既存のポータルサイトの機能を最大限に活用することから始めるのが、最も現実的なステップと言えます。カスタマイズ性や機能拡張が可能なシステムであれば、段階的に機能を充実させていくことも検討できます。

2. グループウェアのコミュニケーション機能(例: Microsoft 365, Google Workspaceなど)

多くの大学で導入が進んでいるグループウェアには、メール、カレンダー、ファイル共有だけでなく、情報発信・共有に役立つ機能が多数含まれています。

グループウェアは、すでに多くの教職員・学生が日常的に利用しているため、新たなツールへの慣れが必要なく、比較的スムーズに情報発信のチャネルとして定着させやすいというメリットがあります。

3. メール配信システム/メーリングリスト

大人数への情報発信には、依然としてメールが有効な手段です。学内のメールシステムだけでなく、より高機能なメール配信サービスや、メーリングリスト機能を活用することも考えられます。

メールは確実な伝達手段の一つですが、大量のメールに埋もれやすい、迷惑メールと間違われやすいといった課題もあります。他のツールと組み合わせて、使い分けることが重要です。

4. デジタルサイネージ

キャンパス内の食堂、図書館、ラウンジなどの共有スペースにデジタルサイネージを設置することも、視覚的な情報伝達に有効です。

デジタルサイネージは、多くの人の目に触れる場所に設置することで、ポータルサイトなどを積極的に確認しない層にも情報を届けられる可能性があるというメリットがあります。ただし、設置場所やコンテンツ更新の手間などを考慮する必要があります。

学内情報発信DXを進めるためのステップ

学内情報発信のDXは、ツールを導入すればすぐに解決するものではありません。段階を踏んで進めることが成功の鍵となります。

  1. 現状把握と課題の洗い出し: 現在、どのような情報を、どのようなチャネルで、誰に向けて発信しているか、そしてそこにどのような課題(伝達漏れ、手間、分かりにくさなど)があるかを具体的に洗い出します。学生や教職員への簡単なアンケートも有効です。
  2. 目的とゴール設定: 情報発信DXによって何を達成したいのか(例: 問い合わせ〇%削減、重要情報の見落とし率低下、情報発信業務の工数〇%削減など)を明確に設定します。
  3. ツール・仕組みの検討と選定: 課題解決と目的達成に最適なツールや仕組みを検討します。既存のシステムで対応可能か、新たなツールの導入が必要かを見極めます。
  4. スモールスタート: いきなり全学的な導入を目指すのではなく、特定の部署や学生グループ、あるいは特定の情報種類(例: 休講情報のみポータルに一元化)から小さく始めて、効果測定と課題抽出を行います。
  5. 運用ルールの策定と周知: どの情報はどのチャネルで発信するか、情報の更新頻度、担当部署などを明確にした運用ルールを策定し、発信する側・受け取る側の双方に周知徹底します。
  6. 定着支援と運用改善: 新しい仕組みやツールへの移行には、教職員・学生への丁寧な説明や操作サポートが不可欠です。また、運用しながら見えてきた課題をもとに、継続的に改善を続けていきます。

まとめ

大学事務における学内情報発信のDXは、煩雑な業務を効率化し、情報伝達の確実性を高めるための重要な取り組みです。既存のポータルサイトやグループウェアの機能を最大限に活用することから始め、目的に合わせて新しいツールを検討・導入していくのが現実的です。

重要なのは、単に新しいツールを使うことではなく、情報伝達のプロセス自体を見直し、学生や教職員にとって本当に「伝わる」仕組みを構築することです。一歩ずつ着実にDXを進めることで、情報伝達のストレスを減らし、大学全体のコミュニケーションを円滑にすることができるでしょう。

まずは、ご自身の部署でどのような情報発信に一番課題を感じているか、そこを効率化するために既存のツールで何かできることはないか、といった視点から検討を始めてみてはいかがでしょうか。