大学DX推進ラボ

大学事務のための成績管理DX:教員とのやり取りからシステム入力まで効率化

Tags: 成績管理, 大学事務, DX, 業務効率化, LMS, ワークフローシステム, データ連携, 教務システム

大学事務の成績管理業務が抱える課題

大学事務における成績管理業務は、教務課をはじめとする多くの部署にとって非常に重要な役割を担っています。しかし、この業務には長年、多くの非効率や負担が伴ってきました。

このような課題は、事務職員の長時間労働の一因となるだけでなく、成績データの正確性にも影響を及ぼしかねません。大学のDX推進は、これらの成績管理業務の負担を軽減し、より正確で効率的なプロセスを構築するための重要な鍵となります。

成績管理DXで何が変わるのか

成績管理にDXを取り入れることで、以下のような変化が期待できます。

これらの変化は、事務職員の業務負担を減らし、より戦略的で創造的な業務に時間を割けるようになるだけでなく、学生へのサービス向上にも繋がります。

成績管理DXを推進するための具体的なツールと活用法

成績管理のDXを推進するために活用できる具体的なツールやアプローチはいくつかあります。

  1. LMS (Learning Management System) の成績管理機能の活用 多くの大学で導入されているLMSには、教員が担当科目の成績を直接入力・管理できる機能が備わっています。この機能を活用することで、教員からの成績提出をオンラインで行うことができます。

    • 活用方法:
      • LMS上で成績入力期間を設定し、教員に入力を促す。
      • LMSの成績データをエクスポートし、学務システムに取り込む(システム連携が可能であればより効率的)。
      • LMS上で成績の確認・修正依頼を受け付ける仕組みを構築する。
    • メリット: 教員と事務職員の間で成績データがデジタルで受け渡されるため、紙やメール添付ファイルによる管理が不要になります。データの形式を統一しやすく、集計やシステム連携も比較的容易になります。
  2. ワークフローシステムの導入・活用 成績の提出、入力、確認、承認といった一連のプロセスをワークフローシステム上で定義し、自動化・可視化します。

    • 活用方法:
      • 教員からの成績提出申請、事務職員による入力完了報告、上長による確認・承認などをワークフロー化する。
      • 提出期限や確認期限を設定し、遅延している場合は自動でリマインダーを送信する。
      • 成績変更依頼の申請・承認プロセスをシステム上で行う。
    • メリット: プロセスの進捗状況が可視化され、誰がどの段階で止まっているかが明確になります。承認フローが明確になり、責任の所在もはっきりします。関連部署間の連携もシステム上で行えるため、効率が向上します。大学向けの学務ワークフローシステムや、汎用的なワークフロー機能を備えたクラウドサービス(例: kintone, Box Relayなど)が活用できます。
  3. データ連携ツールの活用 LMSや特定の形式で提出されたExcelファイルなど、異なる場所に存在する成績データを学務システムなどの基幹システムに自動で取り込むためのツールです。RPA(Robotic Process Automation)も一部の定型的なデータ入力作業の自動化に有効です。

    • 活用方法:
      • LMSからエクスポートしたCSVデータを自動で学務システムにインポートするツールを導入する。
      • 特定のフォーマットで提出されたExcelファイルから必要なデータを抽出し、システムに入力するRPAを開発・導入する。
    • メリット: 手入力作業を極限まで削減できます。データの転記ミスがなくなり、正確性が向上します。ただし、システム間の連携には専門的な知識が必要な場合が多く、情報システム部門との密な連携が不可欠です。
  4. 成績提出フォーマットの標準化とクラウドストレージの活用 直ちに大規模なシステム導入が難しい場合でも、教員に提出してもらう成績データのフォーマット(例:Excelテンプレート)を標準化し、共通のクラウドストレージ(例:Google Drive, Microsoft SharePoint/OneDrive, Boxなど)のフォルダにアップロードしてもらう方法です。

    • 活用方法:
      • 全教員に共通のExcelテンプレートを配布し、そのテンプレートでの提出を必須とする。
      • 教員ごとにアクセス権を設定した専用のフォルダをクラウドストレージ上に作成し、そこにアップロードしてもらう。
      • フォルダの更新通知機能を活用して、提出があったらすぐに把握できるようにする。
    • メリット: システムを大きく変更することなく、比較的容易に導入できます。データの形式が揃うため、その後の入力や処理が効率化されます。提出状況の管理も共有フォルダ上で視覚的に行えます。

これらのツールやアプローチは、大学の既存システムや予算、組織体制によって最適なものが異なります。重要なのは、現在の成績管理業務のどこにボトルネックがあるかを正確に把握し、それに合った解決策を選択することです。

成績管理DXを進める上でのポイント

成績管理DXを成功させるためには、単にツールを導入するだけでなく、いくつかの重要なポイントがあります。

まとめ:成績管理DXで、より正確で負担の少ない業務へ

大学事務における成績管理業務は、これまでの紙や手作業中心の運用から脱却し、デジタル技術を活用することで、飛躍的に効率化し、正確性を向上させることが可能です。LMSの成績管理機能、ワークフローシステム、データ連携ツール、あるいはクラウドストレージの活用など、様々なアプローチが考えられます。

DXは単なるITツールの導入ではなく、業務プロセスそのものを見直し、関係者全員でより良い方法を模索する取り組みです。成績管理のDXは、事務職員の負担を軽減し、本来注力すべき学生支援や教育研究支援により多くの時間を割けるようになるための重要な一歩となります。

まずは、現在の成績管理業務の具体的な課題を洗い出すことから始めてみてはいかがでしょうか。そして、教員や情報システム部門と協力しながら、段階的にDXの取り組みを進めていくことを推奨いたします。

この記事が、皆様の大学における成績管理業務の効率化・DX推進の一助となれば幸いです。