紙のアンケートから卒業!大学事務が知るべきフォーム作成ツールの基本と活用例
大学事務におけるアンケート・情報収集の課題
大学事務の現場では、学生や教職員からの情報収集や意見交換のために、アンケートや各種申請を行う機会が多くあります。しかし、これらの作業が紙ベースで行われている場合、様々な非効率や負担が生じているのではないでしょうか。
例えば、
- アンケート用紙の印刷、配布、回収に手間と時間がかかる
- 手書きの回答をシステムへ手入力する作業に時間がかかり、入力ミスも発生しやすい
- 回答用紙の保管場所が必要になり、管理も煩雑になる
- 集計作業を手作業で行う場合、多大な時間と労力が必要になる
- 集計結果の共有や二次活用が容易ではない
このような紙ベースのプロセスは、事務職員の皆様にとって大きな負担となり、本来時間を割くべき業務に集中できない要因となり得ます。また、回答する側の学生や教職員にとっても、紙の配布物が増えたり、回収のために特定の場所へ提出しに行く必要があったりと、決して利便性が高い方法とは言えない状況もあるかと存じます。
DX(デジタル変革)は、このような長年続いてきた業務プロセスを見直し、デジタル技術を活用してより効率的で負担の少ない形に変えていく取り組みです。その中でも、比較的容易に導入でき、大きな効果が期待できるツールの一つに「フォーム作成ツール」があります。
フォーム作成ツールとは?大学事務の課題をどう解決するか
フォーム作成ツールとは、インターネット上で回答フォームを作成し、回答をオンラインで収集・集計できるサービスやソフトウェアのことです。Google FormsやMicrosoft Formsなど、様々なツールが存在します。
これらのツールを活用することで、先述した紙ベースのアンケート・情報収集の課題を解決し、大学事務の業務効率を飛躍的に向上させることが期待できます。
- 配布・回収の手間削減: 回答者へはリンクを共有するだけでよく、回収の手間は一切かかりません。
- 手入力作業の不要化: 回答は自動的にデータとして蓄積され、手入力によるミスを防ぎます。
- 自動集計と分析: 収集した回答はツールが自動で集計し、グラフ化するなど視覚的に分かりやすく表示してくれます。基本的な集計であれば、手作業の必要がなくなります。
- データの一元管理: 回答データはツール上で一元管理され、必要に応じてExcelなどの形式で簡単にエクスポートできます。
- 回答者の利便性向上: パソコンやスマートフォンから、いつでもどこからでも回答できるようになり、回答者の負担が軽減されます。
現在、多くの大学で導入が進んでいるGoogle WorkspaceやMicrosoft 365には、Google FormsやMicrosoft Formsといったフォーム作成ツールが含まれています。これらのツールは、普段Officeソフトを使っている方でも直感的に操作しやすいインターフェースを備えており、比較的容易に導入・活用を開始できます。
大学事務におけるフォーム作成ツールの具体的な活用例
フォーム作成ツールは、大学事務の様々な場面で活用できます。具体的な例をいくつかご紹介します。
- 学生向けアンケート:
- 履修希望調査、授業改善に関するアンケート
- 満足度調査(大学生活全般、施設利用など)
- イベント参加希望確認、説明会参加申し込み
- 健康状態確認(簡易的なもの)
- 教職員向け情報収集:
- 研修参加希望確認
- 業務改善に関する意見募集
- 物品購入希望調査
- 各種手続きに関する簡易的な意向確認
- 学内イベント受付:
- 説明会、セミナー、講演会などの参加申し込み受付
- 懇親会などの出欠確認
- 簡易的な申請受付:
- 備品貸出申請(予約機能が必要ない簡単な場合)
- 書類発行申請(申請内容のヒアリングのみに使う場合)
これらの業務にフォーム作成ツールを適用することで、紙媒体やメールのやり取りで行っていた煩雑なプロセスを大幅に効率化できます。
フォーム作成ツールの基本機能と導入のステップ
多くのフォーム作成ツールに共通する基本的な機能は以下の通りです。
- 多様な質問形式: 複数選択、単一選択、記述式、プルダウン、チェックボックス、日付、時刻など、目的に合わせて様々な形式で質問を設定できます。
- 回答の必須設定: 必須の質問を設定し、漏れのない回答を促すことができます。
- 回答の分岐: 回答内容に応じて、次に表示する質問を変えるといった設定も可能です(一部ツール)。
- テーマ・デザイン設定: フォームの見た目を大学のイメージカラーなどに合わせることもできます。
- 回答の収集と自動集計: 回答が送信されるとリアルタイムでツールに反映され、自動で集計結果(回答数、選択肢ごとの割合など)が表示されます。
- 結果のエクスポート: 集計された回答データや個別回答をCSVやExcel形式でダウンロードし、詳細な分析や他のシステムでの活用に利用できます。
実際にフォーム作成ツールを業務に導入する際の基本的なステップは以下のようになります。
- 目的の明確化: どのような情報収集・アンケート業務を効率化したいのか、具体的な目的を明確にします。
- ツールの選定: Google Forms、Microsoft Formsなど、利用可能なツールの中から、目的に合った機能を持つツールを選びます。多くの場合は、すでに大学全体で契約しているグループウェアに含まれるツールが利用しやすいでしょう。
- フォームの設計と作成: 目的とする情報収集に必要な質問項目を検討し、フォーム作成ツールの機能を使って実際にフォームを作成します。質問の順序や形式を工夫することで、回答者が入力しやすいフォームになります。
- テスト回答の実施: 公開前に、身近な同僚などにテスト回答をしてもらい、フォームに問題がないか、回答データが正しく収集されるかを確認します。
- フォームの公開と周知: 完成したフォームへのリンクを、回答を依頼したい学生や教職員にメールなどで共有します。回答方法や回答期限を明確に伝えます。
- 回答の収集と確認: 回答状況をツール上で確認します。必要に応じて、未回答者へのリマインダーを行います。
- 集計と分析: ツール上で自動集計された結果を確認したり、データをエクスポートして詳細な分析を行ったりします。
- 結果の活用と共有: 集計・分析した結果を、次のアクションや報告書の作成に活用し、関係者と共有します。
導入・活用に向けたポイントと注意点
フォーム作成ツールの導入は比較的容易ですが、効果を最大限に引き出し、円滑に運用するためのポイントと注意点があります。
- スモールスタートで始める: 最初から全てのアンケート業務を移行しようとせず、まずは回答者数が少なく、質問項目も簡単な業務から試験的に導入してみるのがおすすめです。成功体験を積み重ねることで、他の業務への展開もしやすくなります。
- 情報セキュリティとプライバシーへの配慮: 個人情報や機密情報を含む可能性のある情報を収集する場合は、大学の情報セキュリティポリシーやプライバシーポリシーを遵守し、適切な設定(アクセス制限、回答期間設定など)を行うことが重要です。ツールによっては、機密情報の収集には適さない場合もありますので、事前に確認が必要です。
- 回答者への配慮: 回答者がツールに不慣れな場合も想定し、回答方法に関する簡単な手引きを添えたり、問い合わせ先を明記したりするなど、サポート体制も考慮すると親切です。
- 既存システムとの連携: 収集したデータを既存の学生情報システムや教務システムなどに取り込む必要があるかを確認し、連携方法を検討します。ツールによってはAPI連携やデータエクスポート機能がありますが、手動でのデータ移行が必要な場合もあります。
- 継続的な見直し: 一度フォームを作成して終わりではなく、回答率や収集したデータの活用状況を見ながら、フォームの内容や運用方法を定期的に見直すことで、さらに効率を高めることができます。
まとめ:フォーム作成ツールで大学事務のデジタル化を加速
フォーム作成ツールの活用は、大学事務における紙の書類に依存したアンケートや情報収集業務を大きく変革し、効率化と負担軽減を実現する有効な手段です。手作業による煩雑さから解放され、より戦略的で付加価値の高い業務に時間を振り分けることが可能になります。
すでに多くの大学で導入されているグループウェアに含まれていることが多く、比較的容易に始められる点も魅力です。まずは、日常業務の中で「これはフォーム化できるのではないか?」と考えられるアンケートや情報収集業務を見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。小さな一歩が、大学事務全体のDXを加速させるきっかけとなるはずです。
もし、具体的なツールの操作方法や、特定の業務への適用方法についてさらに詳しく知りたい場合は、大学内のIT担当部署に相談したり、オンラインで公開されている各種ツールの公式ヘルプや活用事例を参考にしたりすることをおすすめします。