イベント受付の負担を減らすDXツールと具体的な進め方
大学では年間を通じて、オープンキャンパス、説明会、講演会、研修、シンポジウムなど様々なイベントが開催されます。これらのイベント運営において、参加者受付は円滑な運営の要となりますが、同時に多くの事務職員にとって負担が大きい業務の一つとなっています。
紙の名簿を使った手作業でのチェック、参加証の準備と配布、当日の問い合わせ対応、そしてイベント後の参加者集計など、アナログなプロセスが中心の場合、多くの時間と労力がかかり、人的ミスが発生するリスクも高まります。また、参加者が多ければ多いほど、受付に長蛇の列ができ、参加者の満足度にも影響を与えかねません。
このようなイベント受付業務の課題は、デジタル技術(DX)を活用することで大きく改善できます。この機会に、イベント受付業務のデジタル化について考えてみませんか。
なぜ今、イベント受付のDXが必要なのか
イベント受付業務のDXは、単に手作業をツールに置き換えるだけではありません。そこには、大学運営にとって重要な様々なメリットがあります。
- 参加者満足度の向上: 受付がスムーズになれば、参加者の待ち時間が減り、最初の印象が良くなります。
- 事務職員の負担軽減: 手作業でのチェックや集計から解放され、より創造的で重要な業務に時間を充てることができます。
- 正確なデータ収集と活用: 参加状況をリアルタイムで把握し、イベント後の分析や次回開催への改善に役立てることができます。
- ペーパーレス化の推進: 紙の参加者リストや資料を減らし、コスト削減と環境負荷低減に貢献できます。
- 柔軟な対応: 参加者数の変動や直前の変更にも、デジタルツールを活用することで迅速に対応しやすくなります。
イベント受付DXで活用できる主なツール・システム
イベント受付業務を効率化するために活用できるデジタルツールは様々です。業務のどの部分をデジタル化したいかに応じて、適切なツールを選ぶことが重要です。
- オンライン事前登録システム:
- 概要: イベント参加の申し込みをオンラインで行うためのシステムです。参加者の情報収集、定員管理、参加費の徴収(必要な場合)、受付リストの自動生成が可能です。
- 活用例: Google FormsやMicrosoft Formsのような汎用ツールから、PeatixやEventbriteのようなイベント管理に特化したプラットフォーム、あるいは大学独自のシステムなどがあります。参加者への確認メール自動送信機能なども便利です。
- チェックインシステム(受付システム):
- 概要: イベント当日の受付で、参加者を確認・記録するためのシステムです。オンラインで発行されたQRコードやバーコード、氏名での検索などにより、迅速なチェックインを実現します。
- 活用例: イベント管理プラットフォームに付帯するアプリや機能、または専用の受付システムを利用します。スマートフォンやタブレット、PCと連携して使用します。
- 参加者への情報共有ツール:
- 概要: イベントに関する最新情報、リマインダー、当日の案内などを参加者に効率的に伝達するためのツールです。
- 活用例: メール配信システム、大学のポータルサイト、イベント専用ウェブページ、コミュニケーションアプリなどが考えられます。
- デジタル参加証・資料配布ツール:
- 概要: 紙の参加証や資料をデジタル化し、スマートフォンなどで表示・閲覧できるようにするツールです。
- 活用例: イベント管理アプリ、特定のドキュメント共有サービス、クラウドストレージへのリンク配布などが利用できます。
これらのツールは単独で利用することも、連携させて利用することも可能です。例えば、オンライン事前登録システムで申し込みを受け付け、生成されたQRコードを使って当日はチェックインシステムで受付を行う、といった流れが考えられます。
具体的なDX導入ステップと成功のポイント
イベント受付のDXを成功させるためには、計画的なアプローチが重要です。
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現状業務の洗い出しと課題特定:
- 現在、イベント受付業務のどのプロセス(告知、申込受付、参加者リスト作成、当日の受付、集計、事後連絡など)に最も時間や手間がかかっているか、あるいはミスが発生しやすいかを具体的に書き出してみます。
- 関係者(実際に受付を担当する職員、学生ボランティアなど)から意見を聞くことも有効です。
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目的と目標の設定:
- DXによって何を達成したいのか、具体的な目的を設定します。(例:受付にかかる時間を〇%削減、紙の消費量を〇%削減、参加者データの集計時間を〇時間短縮など)
- 達成度を測るための具体的な目標値を定めることで、導入効果を検証しやすくなります。
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ツール・システムの選定と検討:
- 設定した目的や必要な機能(参加費徴収の有無、同時開催イベントへの対応、既存システムとの連携、セキュリティ要件など)に基づいて、利用するツールやシステムを検討します。
- 予算、使いやすさ、サポート体制なども重要な選定基準です。まずは無料トライアルやデモを活用してみることをお勧めします。
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小規模でのパイロット導入:
- いきなり全てのイベントに導入するのではなく、まずは規模が小さいイベントや一部の部署でテスト導入を行います。
- これにより、ツールの操作性、現場での課題、想定外の問題などを事前に把握し、本格導入に備えることができます。
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本格導入と関係者への周知・研修:
- 本格導入に向けて、システムの準備を進めます。
- イベント受付を担当する職員やボランティアに対し、新しいツールの操作方法や当日の流れについて丁寧な研修や説明を行います。マニュアルを整備することも有効です。
- 参加者に対しても、事前に受付方法の変更点(例:QRコードを準備してもらう、アプリをインストールしてもらうなど)を分かりやすく案内します。
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効果測定と継続的な改善:
- 導入後に、設定した目標が達成できているか効果を測定します。
- パイロット導入や本格導入で明らかになった課題を分析し、システムの活用方法や運用フローを見直すなど、継続的な改善を行います。
成功のためのポイント:
- 完璧を目指さない: 最初から全てのプロセスをデジタル化しようとせず、最も効果が出やすい部分から始める「スモールスタート」を意識しましょう。
- 関係者との連携: イベントに関わる様々な部署や担当者(企画担当、広報担当、情報システム担当など)と密に連携し、協力体制を築くことが不可欠です。
- 参加者への配慮: デジタル化に不慣れな参加者へのサポート体制(例:QRコードが読み取れない場合の対応、紙媒体での案内も用意するなど)を準備しておくことも大切です。
- セキュリティ: 参加者の個人情報を扱うため、セキュリティ対策がしっかりしたツールを選び、適切な情報管理を徹底します。
まとめ
イベント受付業務のデジタル化は、煩雑な手作業を削減し、事務職員の負担を大きく軽減するだけでなく、参加者の利便性向上や正確なデータ活用にも繋がる重要なDX推進の取り組みです。
この記事でご紹介したツールやステップを参考に、まずは身近なイベントからデジタル化の可能性を検討してみてはいかがでしょうか。小さな一歩から始めることで、大学全体のDX推進の機運を高めることができるでしょう。
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