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大学事務のための契約管理DX入門:紙の管理からシステム活用へ

Tags: 大学DX, 契約管理, 業務効率化, システム活用, ペーパーレス

大学事務の契約管理:紙の課題とDXの必要性

大学運営において、様々な契約書は重要な位置を占めます。研究委託契約、共同研究契約、物品購入契約、業務委託契約、施設利用契約など、その種類は多岐にわたります。これらの契約書の管理は、多くの大学事務職員の方々にとって、時間と手間のかかる業務の一つではないでしょうか。

このような課題は、契約管理が主に紙ベースや部署ごとの個別管理で行われている場合に顕著になります。煩雑な事務作業に追われる中で、契約内容の確認や更新手続きの漏れが発生するリスクも否定できません。

ここで注目されるのが、契約管理におけるデジタル変革(DX)です。契約管理をデジタル化し、システムを活用することで、これらの課題を解決し、業務の効率化とリスク軽減を実現することが可能になります。

契約管理DXで実現できること

大学事務における契約管理のDXは、具体的にどのような変化をもたらすのでしょうか。主なメリットをいくつかご紹介します。

1. 契約書の検索とアクセスが容易になる

デジタル化された契約書は、ファイル名や契約内容に含まれるキーワードで簡単に検索できます。特定の契約書を探すために、分厚いファイルの中から手作業で探す必要はなくなります。必要な情報に迅速にアクセスできるようになり、関係者間の情報共有もスムーズになります。

2. 契約情報の見える化と管理の効率化

契約管理システムなどを活用することで、契約期間、更新日、相手先、金額などの重要な情報を一元管理できます。一覧で確認したり、特定の条件で絞り込んだりすることが容易になり、契約状況の全体像を把握しやすくなります。これにより、更新や解約の対応漏れを防ぐことにつながります。

3. ワークフローとの連携による承認プロセスの効率化

契約締結までの承認プロセスをデジタルワークフローシステムと連携させることで、書類の回覧や押印のために部署間を行き来させる必要がなくなります。システム上で承認状況を確認でき、プロセスの停滞を防ぎ、迅速な契約締結を支援します。既存の記事「紙の申請手続きから卒業!大学事務のためのワークフローシステム活用術」も参考にしてください。

4. セキュリティとコンプライアンスの強化

物理的な書類と比較して、デジタルデータは適切なアクセス権限設定や監査ログの取得が容易です。誰がいつどの契約書にアクセスしたか、どのような変更を加えたかといった記録を残すことができ、内部統制やコンプライアンス強化につながります。また、災害時のデータ保全の観点からもデジタル化は有効です。

5. 保管スペースの削減

紙の契約書を保管するための物理的なスペースが不要になります。オフィス空間を有効活用できるだけでなく、保管コストの削減にもつながります。

契約管理DXのための具体的なツールと活用例

契約管理のDXを実現するためのアプローチはいくつかあります。

1. 契約管理システムの導入

契約書の保管、検索、契約期間管理、更新通知、ワークフロー、アクセス権限設定など、契約管理に必要な機能を網羅した専用システムです。大学の規模や扱っている契約の種類、予算に応じて様々なシステムが提供されています。導入には一定のコストと時間がかかりますが、契約管理業務の効率化と精度向上に最も効果的です。

2. クラウドストレージとワークフローの組み合わせ

Google Drive、SharePointなどのクラウドストレージに契約書のスキャンデータを保管し、そこにアクセス権限を設定します。契約締結の承認プロセスには、Microsoft Power AutomateやGoogle App Scriptなどを活用した簡単なデジタルワークフローを構築します。既存のツールを活用するため、比較的導入しやすいアプローチです。ただし、契約期間管理や更新通知機能は別途工夫が必要になる場合があります。

3. 電子契約サービスの活用

契約締結そのものをオンラインで行う電子契約サービスを導入することで、押印や郵送の手間を省くことができます。締結された契約書はデジタルデータとしてそのまま管理できます。既存の記事「大学事務の押印・署名業務が変わる!電子署名・電子契約の基本と活用例」も参照ください。電子契約サービスの中には、契約管理機能を持つものもあります。

DX導入に向けたステップ

契約管理のDXを進めるには、段階的に取り組むことが重要です。

  1. 現状の課題と要件の洗い出し: 現在の契約管理プロセスにおける具体的な課題(例:検索に時間がかかる、更新漏れが多いなど)を明確にし、DXによって何を解決したいか、どのような機能が必要かを洗い出します。
  2. 目標設定: DX導入によって、どの業務をどれくらい効率化したいか、どのようなリスクを軽減したいかなど、具体的な目標を設定します。
  3. ツールの情報収集と選定: 上記で挙げたような契約管理システム、クラウドストレージ、ワークフロー、電子契約サービスなど、様々なツールの情報を集め、大学の規模、予算、必要な機能、既存システムとの連携などを考慮して最適なツールを選定します。まずは一部署や特定の種類の契約からスモールスタートを検討するのも良い方法です。
  4. 導入計画の策定と実施: 選定したツールの導入計画を立て、段階的に実施します。過去の契約書のデジタル化(スキャンなど)も並行して進めます。
  5. 関係者へのトレーニングと定着: 実際にシステムを利用する教職員や事務職員に対して、操作方法や新しい管理ルールに関する丁寧なトレーニングを実施します。利用状況を確認しながら、課題を改善し、新しい運用方法を定着させていきます。

まとめ:契約管理DXで安心・効率的な事務へ

大学事務における契約管理のDXは、単に紙をなくすだけでなく、業務の効率を大幅に向上させ、契約に関連するリスクを低減するための重要な取り組みです。紙の山に囲まれ、契約書を探すのに苦労したり、更新漏れを心配したりする状況から解放され、より戦略的で価値の高い業務に時間を充てられるようになります。

一歩ずつ着実にデジタル化を進めることで、契約管理はよりスムーズで確実なものへと変わります。まずは、自部署の契約管理の現状を見つめ直し、どのような課題があるか、どのようなツールで解決できそうか検討を始めてみてはいかがでしょうか。