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大学事務のための予算管理DX入門:煩雑な計画・執行管理を効率化

Tags: 予算管理, 執行管理, ワークフロー, 会計システム, DX, 業務効率化

大学事務における予算管理の現状とDXの必要性

大学の運営において、予算管理は非常に重要な業務の一つです。各部署の活動計画に基づいた予算編成から、執行状況の確認、実績の集計に至るまで、多岐にわたるプロセスが必要です。しかし、多くの大学事務現場では、この予算管理業務が非効率になっているケースが見られます。

例えば、予算要求は紙の書類や部署ごとに作成された異なる形式のExcelファイルで行われ、それを手作業で集計・統合する作業に多くの時間を要しているという状況があります。また、予算執行状況の確認もリアルタイムで行うことが難しく、月次や四半期ごとに手作業でデータを集めて報告書を作成しているため、現状を正確かつ迅速に把握することが困難です。承認プロセスも紙の書類が部署間を回覧されるため時間がかかり、予算執行が遅れるといった課題も発生します。

このような状況は、事務職員の業務負担を増大させるだけでなく、予算の適切な執行や戦略的な資源配分を妨げる要因にもなりかねません。ここで重要となるのが、デジタル技術を活用した予算管理のDX(デジタルトランスフォーメーション)です。予算管理プロセスをデジタル化・効率化することで、これらの課題を解決し、より迅速かつ正確な予算管理を実現することが期待できます。

予算管理をDX化するメリット

予算管理のDX推進は、大学事務に様々なメリットをもたらします。

これらのメリットにより、事務職員はルーチンワークにかかる時間を削減し、より戦略的で付加価値の高い業務に時間を振り分けることが可能になります。

予算管理DXを実現するツールと活用例

予算管理のDXを実現するためには、目的に合ったツールの活用が不可欠です。いくつかの代表的なツールと活用例をご紹介します。

  1. 予算管理システム(専用ツール): 予算の計画立案、配賦、執行管理、実績集計、分析といった予算管理に特化した機能を持つシステムです。大学の組織構造や会計基準に合わせてカスタマイズできるものもあります。

    • 活用例: 各部署がシステム上で予算要求を入力・提出し、本部が集計・調整を行います。予算執行時には、システム経由で申請を行い、承認フローを経て執行。執行状況はリアルタイムでシステムに反映され、いつでも部署別、費目別などのレポートを参照できます。
  2. ワークフローシステム: 様々な申請・承認プロセスを電子化するためのシステムです。予算執行申請、購入申請などのワークフローを構築し、承認を効率化できます。多くの場合、会計システムなど他のシステムとの連携が可能です。

    • 活用例: 物品購入や経費支出に関する申請をシステム上で行い、承認者の承認を得てから執行します。これにより、紙の書類を持ち運ぶ手間がなくなり、申請から承認までの時間を短縮できます。予算管理システムと連携することで、承認済みの申請情報が予算執行データとして自動的に取り込まれるようにすることも可能です。
  3. ERP(統合基幹業務システム)の一機能: 会計、人事、購買など大学内の様々な業務を統合的に管理するシステムです。多くのERPには予算管理機能が組み込まれており、他のモジュール(会計など)と連携することで、データの一貫性を保ちながら予算管理を行えます。

    • 活用例: 会計データと連携した予算執行状況のリアルタイム管理や、人事データと連携した人件費予算の管理などが一元的に行えます。ただし、ERPの導入は大規模になるため、全学的な検討が必要です。

これらのツールは単独で利用することも、組み合わせて利用することもあります。例えば、予算編成・管理は専用システムで行い、個別の執行申請・承認はワークフローシステムで行うといった運用も可能です。

予算管理DXを始めるためのステップ

「何から始めれば良いか分からない」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。予算管理DXを始めるための一般的なステップをご紹介します。

  1. 現状業務の棚卸しと課題の明確化: まず、現在の予算編成・執行管理プロセスを詳細に洗い出し、どこに手間や時間がかかっているか、どのような課題があるかを特定します。関係部署へのヒアリングも有効です。
  2. 目指す姿と必要な機能の検討: DXによってどのような状態を目指したいのか(例:承認時間の短縮、リアルタイムな執行状況把握など)を明確にし、それを実現するために必要なツールの機能をリストアップします。
  3. ツールの情報収集と選定: 課題解決に役立ちそうなツールについて情報収集を行います。複数のツールを比較検討する際は、操作性、既存システムとの連携性、導入・運用コスト、サポート体制などを確認することが重要です。可能であれば、デモンストレーションを受けたり、トライアル期間を利用したりして、実際に触ってみることを推奨します。
  4. スモールスタートの検討: いきなり全学的に導入するのではなく、特定の部署や特定の費目から試験的に導入する「スモールスタート」も有効な方法です。これにより、実際の運用を通じて課題や改善点を見つけやすくなります。
  5. 導入計画の策定と実行: 選定したツールの導入スケジュール、担当体制、必要なデータ移行などを計画し、実行します。ベンダーのサポートを活用しながら進めることが一般的です。
  6. 関係者への周知と研修: 新しいシステムやプロセスに慣れてもらうため、利用する教職員への丁寧な説明と操作研修を実施します。マニュアル整備や問い合わせ対応体制の構築も重要です。

他の大学の事例も参考にしながら、自学の状況に合わせた最適なアプローチを検討してください。例えば、ある大学では、煩雑だった予算執行申請のワークフローをシステム化したことで、申請から承認までの平均日数が大幅に短縮され、教職員からの事務手続きに関する満足度が向上したという事例があります。

まとめ:予算管理DXで大学事務の質を高める

大学事務における予算管理のDXは、単に特定の業務を効率化するだけでなく、予算の透明性を高め、戦略的な資源配分を可能にすることで、大学全体の運営に貢献する重要な取り組みです。

現在の紙やExcelベースの管理に限界を感じているのであれば、まずは現状の課題を整理し、どのようなツールで解決できそうか情報収集を始めることからお勧めします。最初から大規模なシステム導入を考える必要はありません。ワークフローの一部をデジタル化するなど、小さく一歩を踏み出すことも十分に有効です。

予算管理のDXを通じて、事務職員の負担を軽減し、より正確で迅速な情報提供を実現することで、大学の教育研究活動を強力に支えていくことができるでしょう。