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大学事務のための研究室支援業務効率化:よくある依頼対応をデジタルでスムーズに

Tags: 大学事務, 研究室支援, 業務効率化, ツール活用, DX

大学事務における研究室支援業務の現状と課題

大学事務職員は、教育や研究の円滑な推進を支える重要な役割を担っています。その中でも、各研究室からの様々な依頼への対応は、日常業務の大きな部分を占めていることと存じます。物品購入の申請代行、旅費の精算補助、各種証明書の発行依頼、学内手続きに関する問い合わせ対応など、その内容は多岐にわたります。

これらの依頼に対して、研究室からの連絡手段は電話、メール、口頭、メモ書きなど、様々であることが少なくありません。また、依頼内容が不明確であったり、必要な情報が不足していたりすることも発生するかもしれません。このような状況では、依頼を受けるたびに内容の確認に時間を要したり、進捗状況の管理が煩雑になったり、対応漏れや伝達ミスが生じるリスクも高まります。紙ベースでのやり取りが多い場合は、書類の紛失リスクや保管スペースの問題も考慮する必要があります。

結果として、研究室からの依頼対応に追われ、本来注力すべき他の業務に時間を割けなくなるといった課題を抱えている大学事務室も多いのではないでしょうか。

DXによる研究室支援業務効率化の可能性

このような研究室支援業務の課題は、デジタル技術やツールを活用したDX(デジタルトランスフォーメーション)によって、大幅に改善できる可能性があります。依頼の受付から完了までの一連のプロセスをデジタル化することで、効率化、正確性の向上、そして研究室と事務室双方の負担軽減が期待できます。

具体的には、以下のようなデジタルツールや取り組みが有効と考えられます。

1. 依頼受付窓口の一元化と標準化

現状、研究室からの依頼方法が多岐にわたることが、事務室側の対応負担を増やしている一因です。これを解決するためには、依頼受付窓口を一つに集約し、依頼に必要な情報を明確に定義することが有効です。

フォームやシステムを導入する際は、研究室の教職員にその存在と使い方を周知し、利用を奨励することが重要です。

2. 依頼進捗状況の可視化と共有

依頼を受け付けてからの進捗状況が見えにくいことも、事務室内の連携や研究室からの問い合わせに対応する上での負担となります。進捗管理ツールを導入することで、この課題を解決できます。

進捗状況が可視化されることで、対応漏れを防ぎ、研究室からの問い合わせに対しても迅速かつ正確な情報を提供できるようになります。

3. 関連情報・ドキュメントの一元管理

依頼対応においては、過去の対応履歴や関連する規程、書式などの情報が必要になることが多くあります。これらの情報が散在していると、探すのに時間がかかったり、誤った情報に基づいて対応してしまったりするリスクがあります。

これにより、情報の探索時間を削減し、チーム内での情報共有もスムーズになります。

4. コミュニケーションの円滑化

依頼内容に関する不明点や確認事項が発生した場合、研究室とのスムーズなコミュニケーションは不可欠です。

デジタルツールを活用することで、研究室とのコミュニケーションがより円滑になり、依頼対応のスピードアップにつながります。

DX推進のためのステップと成功のポイント

研究室支援業務のDXを始めるにあたっては、以下のステップやポイントを参考にしていただけます。

  1. 現状の課題と範囲の特定: どのような種類の依頼対応に特に時間がかかっているのか、どのような非効率が発生しているのかなど、現状の課題を具体的に洗い出します。その上で、まずはどの範囲の依頼からDXを始めるか(例: 物品購入依頼のみ、特定の研究室からの依頼のみなど)を決めます。
  2. ツールの選定と試行: 課題解決に有効と思われるツールを選定します。無料プランやトライアル期間があるツールで、まずは小規模に試行的に導入してみることをお勧めします。使いやすさや、既存の学内システムとの連携可能性などを考慮します。
  3. 研究室との連携: 新しい依頼方法やツールについて、研究室の教職員に丁寧に説明し、理解と協力を求めます。簡単なマニュアルを作成したり、説明会を実施したりすることも有効です。研究室側の負担が増えないよう、配慮が必要です。
  4. 定着と拡大: 試行導入の結果を評価し、課題を改善しながら徐々に利用範囲を拡大していきます。他の事務職員への情報共有や研修も行い、組織全体での定着を目指します。

他の大学でも、オンラインフォームによる依頼受付システムの導入や、タスク管理ツールによる進捗管理などで、研究室支援業務の効率化に成功している事例は増えています。例えば、これまでメールや電話でバラバラに受けていた依頼を全て専用フォームに集約した結果、依頼内容の確認作業が大幅に削減され、対応時間が短縮されたという例があります。

まとめ

大学事務における研究室からの依頼対応業務は、日々の負担が大きい部分の一つです。しかし、オンラインフォーム、タスク管理ツール、クラウドストレージといった身近なデジタルツールを活用することで、これらの業務を効率化し、事務職員の負担を大きく軽減することが可能です。

まずは、ご自身の部署で特に負担となっている依頼業務に焦点を当て、オンラインフォームでの受付試行や、チーム内での簡易的なデジタル進捗管理から始めてみてはいかがでしょうか。小さな一歩からでも、研究室支援業務のDXは着実に進めることができます。これにより、より正確で迅速な対応が可能となり、研究室との良好な関係維持にも貢献し、事務職員はより戦略的・創造的な業務に時間を活用できるようになることと存じます。