大学事務が始めるペーパーレス化:印刷コストを減らして業務を効率化する方法
大学事務における紙の現状とペーパーレス化の重要性
大学事務の現場では、今も多くの紙が使われています。学生からの申請書類、教職員向けの回覧文書、会議資料、アンケート用紙、成績証明書など、様々な書類が印刷され、配布され、保管されています。これは長年の慣習であったり、特定の業務プロセスで紙が必須とされてきた結果かもしれません。
しかし、これらの紙に伴うコストや手間の増加は無視できない課題となっています。印刷にかかる費用はもちろんのこと、紙の保管場所の確保、書類の検索や仕分けにかかる時間、そして紛失のリスクなど、様々な負担が生じています。
デジタル化が進む現代において、ペーパーレス化は単なるコスト削減策に留まりません。業務効率の向上、情報共有の迅速化、セキュリティ強化、そして場所に縛られない働き方の実現など、大学DX推進において非常に重要な要素の一つと言えます。
この度、本稿では、大学事務の現場でペーパーレス化をどのように進めていけるのか、具体的なステップや役立つツール、そしてその導入によって得られるメリットについてご紹介します。
ペーパーレス化で得られる具体的なメリット
ペーパーレス化を進めることで、大学事務の現場には多くのメリットがもたらされます。
- コスト削減: 印刷用紙、インク・トナー代、プリンターのリース・メンテナンス費用といった直接的なコストを削減できます。
- 業務効率化: 書類の検索や共有が容易になり、承認プロセスなどもオンライン化することで迅速化できます。物理的な移動や手作業が減り、他の業務に時間を充てられるようになります。
- 保管スペースの削減: 大量の書類を保管するための棚や倉庫が不要になり、オフィススペースを有効活用できます。
- セキュリティ向上: アクセス権限の設定や操作ログの管理が可能になり、重要な情報の紛失や漏洩リスクを軽減できます。
- 環境負荷低減: 紙の使用量を減らすことで、環境保護に貢献できます。
- 場所に縛られない働き方: 電子化された書類はどこからでもアクセス可能なため、テレワークなど柔軟な働き方を支える基盤となります。
これらのメリットは、日々の煩雑な業務に追われる大学事務職員の皆様にとって、負担軽減と生産性向上に直結するものです。
ペーパーレス化を始めるためのステップ
では、具体的にどこからペーパーレス化を始めれば良いのでしょうか。ゼロから全てを一度に変えるのは難しいかもしれません。ここでは、段階的に進めるための基本的なステップをご紹介します。
- 現状の「紙」業務の把握:
- まず、日々の業務でどのような書類をどれくらい扱っているかを洗い出します。申請書、回覧板、会議資料、報告書など、種類ごとに整理してみましょう。
- それぞれの書類が「なぜ紙である必要があるのか」「どのようなプロセスで扱われているか」を確認します。
- ペーパーレス化の優先順位付け:
- 洗い出した書類の中から、比較的ペーパーレス化しやすいもの、あるいはペーパーレス化による効果が大きいものを選びます。
- 例えば、頻繁に印刷・配布される回覧文書、定例会議の資料、学内からの各種申請書などが挙げられます。
- まずは一つの業務や部署から試験的に導入するのも有効です。
- 目標設定:
- 「〇ヶ月後までに、この種類の文書の紙での運用を〇割削減する」といった具体的な目標を設定します。
- ツールやプロセスの検討・導入:
- 選定した業務のペーパーレス化に適したツールやプロセスを検討します。
- 既存の学内システムで対応可能か、新たなツールの導入が必要かなどを確認します。
- 関連部署や教職員への説明、ルールの策定も並行して進めます。
- 小さな成功を積み重ね、展開:
- まずは目標とした範囲でのペーパーレス化を試行し、効果や課題を検証します。
- 成功事例を学内で共有し、他の業務や部署へ横展開していきます。
大学事務のペーパーレス化に役立つツールと活用例
ペーパーレス化を推進するために、様々なデジタルツールが役立ちます。既に大学で導入されているツールもあるかもしれません。
- クラウドストレージ/ファイル共有サービス (例: Google Drive, Microsoft SharePoint/OneDrive):
- 活用例: 会議資料や学内共有文書などをクラウド上にアップロードし、関係者にリンクを共有することで、資料の印刷・配布を不要にします。バージョン管理機能を使えば、常に最新版の資料を確認できます。紙の保管場所を電子化されたデータ保管場所に置き換えます。
- 電子フォーム作成ツール (例: Google Forms, Microsoft Forms):
- 活用例: 学生や教職員からの各種申請、アンケートなどをオンラインフォームで受け付けます。紙の申請書やアンケート用紙の印刷・配布・回収・集計の手間が大幅に削減できます。回答データは自動的に集計されるため、その後の処理も効率化されます。
- ワークフローシステム/電子承認システム:
- 活用例: 稟議書や申請書類などの承認プロセスをシステム上で行います。紙の書類を回して押印をもらう手間が省け、承認状況も可視化されます。クラウドストレージと連携して、添付書類もデジタルで管理できます。
- オンライン会議ツール (例: Zoom, Microsoft Teams, Google Meet):
- 活用例: オンライン会議中に画面共有で資料を閲覧できるため、事前に資料を印刷する必要がありません。議事録もデジタルで共有すれば、さらにペーパーレス化が進みます。
- スキャナーとOCR機能:
- 活用例: 既存の紙文書をスキャンして電子化し、OCR機能でテキストデータとして活用できるようにします。これにより、過去の重要な紙文書もデジタルで検索・管理できるようになります。
- 電子署名サービス (例: DocuSign, CloudSign):
- 活用例: 契約書や重要な同意書など、押印や署名が必要な文書を電子的に完結させます。これにより、印刷、郵送、保管の手間やコストを削減できます。導入には法的な要件や学内規定の確認が必要な場合があります。
これらのツールを単独で利用するだけでなく、組み合わせて活用することで、より広範な業務のペーパーレス化と効率化が実現できます。
ペーパーレス化を進める上でのポイント
ペーパーレス化はツールを導入すれば全てが解決するわけではありません。定着させるためにはいくつかのポイントがあります。
- 小さな一歩から始める: 全ての業務を一気にペーパーレス化しようとせず、効果が見えやすい特定の業務から段階的に導入します。
- 利用ルールの明確化: 「会議資料は〇日前までにクラウドストレージにアップロードする」「申請書は電子フォームのみで受け付ける」など、具体的な運用ルールを定めます。
- 関係者への周知と教育: 利用するツールや新しいプロセスについて、関係者(学生、教職員を含む)に丁寧に説明し、必要に応じて操作方法の研修などを行います。特にデジタルツールの利用に不慣れな方へのサポートは重要です。
- 成功事例の共有: ペーパーレス化によって業務がどれだけ効率化されたか、コストがどれだけ削減されたかといった具体的な成果を学内で共有し、取り組みを推進する機運を高めます。
まとめ:ペーパーレス化は大学事務DXの重要な基盤
大学事務におけるペーパーレス化は、単に紙を減らすだけでなく、業務効率化、コスト削減、そしてより柔軟で安全な働き方を実現するための重要なステップです。すぐに全ての紙をなくすことは難しくても、まずは日々の業務でよく使う紙から、デジタルツールを活用して置き換えていくことから始められます。
今回ご紹介したクラウドストレージ、電子フォーム、ワークフローシステムといったツールは、既に多くの大学で導入が進められているものも多いでしょう。これらの既存ツールをペーパーレス化の視点で見直し、活用を広げていくことも有効な手段です。
ペーパーレス化への一歩を踏み出すことは、大学事務の皆様の業務負担を軽減し、より生産的な働き方を実現するための確実な道筋となります。ぜひ、自部署や担当業務で「どの紙からなくせるか」を考えてみてください。そして、もしツールの利用方法に不安があれば、学内のIT部門やDX推進部門に相談してみることをお勧めいたします。
DX推進は、皆様一人ひとりの小さな取り組みの積み重ねから始まります。ペーパーレス化を通じて、大学事務の未来をより良いものにしていきましょう。