大学事務のためのオンラインイベント運営入門:説明会・研修をスムーズに進めるコツ
オンラインイベント運営、こんなお悩みはありませんか?
近年、大学においてもオープンキャンパスの説明会、入試説明会、保護者会、教職員向け研修、研究室のオンラインセミナーなど、様々なイベントがオンラインで開催される機会が増えています。
事務職員の皆様の中には、
- 「突然オンラインイベントの担当になったが、何から手をつければ良いか分からない」
- 「オンライン会議ツールは使ったことがあるが、大人数を相手にしたイベント運営は不安がある」
- 「参加者からの質問対応や資料共有をどうすればスムーズに行えるか」
- 「ITにあまり詳しくない参加者へのサポートはどうすれば良いか」
といった課題をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
対面でのイベント運営とは異なる準備や進行のポイントがあり、戸惑うこともあるかもしれません。しかし、オンラインイベントには場所の制約なく開催できる、より多くの人に参加してもらえる可能性がある、コストを抑えられるといったメリットもあります。
この記事では、大学事務の皆様がオンラインでの説明会や研修などをスムーズに運営できるよう、基本的な流れとオンラインツールの活用法、そして準備と当日の実践的なコツをご紹介します。
オンラインイベント運営の基本的な流れ
オンラインイベントの運営は、いくつかのステップに分けて考えると分かりやすくなります。
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企画・準備段階:
- 目的と目標の設定: 何のためにこのイベントを行うのか、どのような成果を目指すのかを明確にします(例: 入試説明会であれば、学部・学科の魅力を伝え、志願者を増やすこと)。
- ターゲット参加者の設定: 誰に向けて行うイベントなのか(受験生、保護者、在学生、教職員など)を明確にし、その層に合わせた内容や形式を検討します。
- コンテンツの企画: どのような情報を伝えるか、どのような形式(講演、質疑応答、グループワークなど)で行うかを具体的に計画します。
- 日程と時間の設定: 参加者が集まりやすい日時を設定します。オンラインであるため、全国、場合によっては海外からの参加者も考慮に入れる必要があります。
- 使用ツールの選定: 参加人数、必要な機能(画面共有、チャット、質疑応答Q&A、ブレイクアウトルーム、録画など)、予算などを考慮して、最適なオンライン会議・イベントツール(Zoom、Microsoft Teams、Google Meetなど)を選びます。
- 役割分担: 進行役(司会)、講演者、ツール操作担当、質疑応答対応担当など、必要な役割を決め、担当者を割り当てます。
- マニュアル・台本の作成: 進行の流れ、各担当者のセリフ、ツールの操作手順などを記したマニュアルや台本を作成します。これにより、当日の混乱を防ぎ、スムーズな進行が可能になります。
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告知・集客段階:
- 告知方法の検討と実施: 大学の公式ウェブサイト、学部・学科のページ、メールマガジン、SNS、紙媒体のパンフレットなど、ターゲット層に合わせた方法でイベントを告知します。
- 参加登録フォームの作成と管理: 氏名、所属、メールアドレスなどを収集するためのオンラインフォーム(Google Forms、Microsoft Forms、大学で契約しているフォームツールなど)を作成し、参加登録者を管理します。登録者には参加用URLや資料の案内などを自動または手動で送付します。
- 参加者への事前案内: 登録完了通知、イベント前日のリマインダーメール、参加方法の詳細な案内(ツールへの接続方法、音声・カメラの設定方法など)を送付します。ITに不慣れな方向けに、分かりやすい操作ガイドを添付することも有効です。
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イベント当日:
- 事前接続テスト: 講演者や運営スタッフは事前に集まり、音声・映像、画面共有、使用する機能(チャット、Q&Aなど)のテストを行います。
- 参加者の入室管理: ツールによっては、参加者を待機室で一度受け止め、準備ができ次第入室を許可する設定が可能です。これにより、開始前の混乱を防ぎます。
- イベントの進行: 司会者がイベントを開始し、台本に沿って進行します。講演者へのパス、質疑応答の取りまとめなどを担当します。
- ツール操作: 画面共有、チャットでの情報提供(関連リンクなど)、質疑応答機能の管理、録画開始・停止など、ツールの機能を担当者が操作します。
- トラブル対応: 参加者から音声が聞こえない、画面が見られないといった問題が発生した場合に備え、チャットや別の連絡手段(電話など)で対応できる体制を整えておきます。よくある質問とその回答集(FAQ)を用意しておくのも効果的です。
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事後フォロー:
- アンケートの実施: イベントの内容や運営に関するアンケートを実施し、参加者の満足度や改善点を把握します。オンラインフォームを活用すると、集計が容易です。
- 資料共有・録画公開: イベント中に使用した資料や、録画した内容を参加者に共有します。期間限定で公開するなどの方法があります。
- 問い合わせ対応: イベント後に寄せられる質問や問い合わせに対応します。
オンラインツール活用のポイント
オンラインイベント運営において中心となるのが、ZoomやTeams、Google Meetといったオンライン会議・イベントツールです。これらのツールには、イベントを円滑に進めるための様々な機能が備わっています。
- 画面共有機能: 発表資料(PowerPoint、PDFなど)やウェブサイト、アプリケーションの画面を参加者に見せることができます。資料の準備と共有方法を決めておくことが重要です。
- チャット機能: 参加者からリアルタイムで質問を受け付けたり、運営側から補足情報(関連リンク、資料ダウンロードURLなど)を提供したりするのに役立ちます。質問をチャットで受け付け、まとめて回答する時間を設けるなどの運用ルールを決めておくと良いでしょう。
- 質疑応答(Q&A)機能: 特に大規模なイベントツールでは、チャットとは別に質問専用の機能が用意されていることがあります。質問を一覧化したり、他の参加者が質問に「いいね」をつけたりできるため、多くの質問が寄せられる場合に便利です。回答済み・未回答などの管理も可能です。
- レコーディング(録画)機能: イベントの内容を録画できます。後日、欠席した参加者や内容を振り返りたい参加者へ共有する際に役立ちます。ただし、録画前に参加者へその旨を周知し、同意を得ることが必要です。
- ブレイクアウトルーム機能: 参加者を少人数のグループに分けて話し合いなどを行うことができます。研修やワークショップ形式のイベントで有効です。
- 投票(polling)機能: 参加者に対してリアルタイムでアンケートやクイズを行うことができます。参加者の関心を引きつけたり、理解度を確認したりするのに利用できます。
これらの機能を効果的に活用するためには、事前にツールの使い方を十分に確認し、運営担当者全員が操作に慣れておくことが大切です。
スムーズな運営のための実践的なコツ
- 事前のリハーサルを複数回行う: 講演者、司会、ツール操作担当など、主要なメンバーで通しでのリハーサルを行います。接続、音声・映像、画面共有、質疑応答の流れなどを実際に試し、問題点を洗い出します。
- 参加者向け簡易マニュアルを作成・配布する: ツールのインストール方法、参加用URLのクリック方法、音声・映像のオンオフ方法、質問方法など、イベント参加に必要な基本的な操作手順を、スクリーンショット付きで分かりやすくまとめた資料を事前に配布します。
- 複数の運営スタッフで役割を分担する: 一人が全てを担当するのではなく、司会、ツール操作、質疑応答対応、技術サポートなど、複数のスタッフで役割を分担することで、一人あたりの負担を減らし、問題発生時の対応力を高めます。
- 参加者のマイクはミュートを基本とする: 大人数でのイベントの場合、参加者のマイクは基本的にはミュート設定としておき、発言時のみ解除してもらう運用が望ましいです。これにより、予期せぬ雑音が入るのを防ぎます。
- 予備の機材や回線を準備する: 運営側の担当者は、メインで使用するPCとは別に予備のPCを用意したり、有線LAN接続を基本としつつWi-Fiも使えるようにしておくなど、機材や回線のトラブルに備えることが重要です。
- よくある質問(FAQ)をまとめておく: イベントの内容に関する質問だけでなく、ツールに関する質問(音声が聞こえない、画面が見られないなど)への基本的な対処法をまとめておき、すぐに参照できるようにしておくと、当日の問い合わせ対応が迅速に行えます。
- イベント開始時刻より早めに開場する: 参加者が開始時刻ギリギリになって慌てて接続することがないよう、イベント開始時刻の15分~30分前にオンライン会場を開場し、接続確認や簡単なBGMを流すなどして参加者を迎え入れると、落ち着いた雰囲気で開始できます。
他大学での事例から学ぶ
ある大学では、学部説明会をオンラインで開催するにあたり、事前に参加登録者限定でツールの接続テスト期間を設けました。これにより、本番前に多くの参加者が自身の環境で問題なく接続できるかを確認でき、当日の接続トラブルを大幅に減らすことに成功しました。また、別の大学では、質疑応答機能に寄せられた質問に対し、リアルタイムでの回答に加え、イベント終了後によく寄せられた質問とその回答をFAQとして大学サイトに掲載し、後日参加者や欠席者も参照できるように工夫しています。
これらの事例からも分かるように、事前の準備と、参加者への丁寧なサポートがオンラインイベント成功の鍵となります。
まとめ:オンラインイベント運営はDXへの確かな一歩
オンラインイベントの運営は、企画から事後フォローまで多岐にわたる業務ですが、適切なツールの選定と活用、そして事前の周到な準備によって、スムーズかつ効果的に行うことが可能です。これは、まさに大学の業務をデジタル化し、効率を高める「大学DX」の一環と言えるでしょう。
最初は慣れない作業に戸惑うこともあるかもしれませんが、ここでご紹介した基本的な流れやコツ、ツールの活用法を参考に、ぜひ一歩ずつ取り組んでみてください。オンラインイベントの運営スキルは、今後の大学業務においてますます重要になっていくことでしょう。
この記事でご紹介した情報が、皆様のオンラインイベント運営の一助となれば幸いです。今後も「大学DX推進ラボ」では、大学事務の皆様の業務効率化やDX推進に役立つ情報をお届けしてまいります。