大学事務の教育・研究成果情報管理が変わる!収集・公開プロセスを効率化する方法
大学における教育活動や研究活動の成果は、大学の価値を示す重要な情報源です。これらの成果情報を適切に管理し、学内外に公開することは、大学のブランディングや資金獲得、社会連携において不可欠な業務となります。しかし、この教育・研究成果情報の収集、管理、そして公開に至る一連のプロセスは、多くの大学事務職員にとって負担の大きい業務であることも少なくありません。
教育・研究成果情報管理における大学事務の課題
教育・研究成果情報の管理プロセスでは、以下のような課題に直面することが多くあります。
- 情報の分散と収集の煩雑さ: 教員からの成果報告書が、メール、紙媒体、個別のファイルなど、様々な形式や経路で提出され、一元的に把握・管理することが困難です。催促や内容確認に手間がかかることもあります。
- 入力・整理の手間: 収集した情報を学内データベースやWebサイト掲載用のフォーマットに手作業で入力したり、ファイルを整理したりする作業は、時間がかかりミスも発生しやすいものです。
- バージョン管理の複雑さ: 報告書や関連資料の改訂版が複数存在する際に、どれが最新版か判別したり、過去のバージョンを管理したりすることが複雑になります。
- 関係者間の連携不足: 成果情報の収集担当者、データベース管理者、Webサイト更新担当者など、関係部署・担当者間での情報共有や連携がスムーズに行えず、作業が滞る場合があります。
- 情報の検索性の低さ: 過去の成果情報を探したい場合、特定のキーワードや条件で効率的に検索できる環境が整っていないと、必要な情報を見つけるのに時間がかかります。
このような課題は、事務職員の業務負担を増やすだけでなく、情報公開の遅れや不正確さを招く可能性もあります。
DXによる教育・研究成果情報管理プロセスの効率化
デジタル技術を活用したDX推進は、これらの課題を解決し、教育・研究成果情報管理プロセスを効率化するための有効な手段となります。具体的な効率化のアプローチと、そのためのツール活用例をご紹介します。
1. 報告書収集プロセスの改善
課題: 報告書形式のばらつき、収集漏れ、催促の手間
DXによる解決策: オンラインフォームツールを活用し、提出フォーマットを標準化・オンライン化します。
- 活用ツール例: Google Forms, Microsoft Forms, SurveyMonkeyなど
- 具体的な活用方法:
- フォーム機能を使って、必要な項目(研究テーマ、成果概要、発表媒体、関連ファイル添付など)を網羅した報告書テンプレートを作成します。
- 教員には、このオンラインフォームを通じて報告書を提出していただくよう依頼します。
- フォームの回答は自動的にスプレッドシートなどに集約されるため、データ入力の手間が省け、収集状況も一覧で確認できます。
- 回答期限の設定や、未提出者へのリマインダー機能(ツールによる)を活用することで、収集漏れや催促の手間を削減できます。
2. 情報の一元管理と検索性向上
課題: 情報の分散、ファイル管理の煩雑さ、情報の検索困難
DXによる解決策: クラウドストレージや情報共有プラットフォームを活用し、情報を一元的に管理し、検索しやすい環境を整備します。
- 活用ツール例: Google Drive, Microsoft SharePoint/OneDrive, Boxなど
- 具体的な活用方法:
- オンラインフォームから収集したデータや、教員から別途提供された関連ファイルを、ルールに沿ってクラウドストレージ上の特定のフォルダに集約します。
- フォルダ構成やファイル名に統一ルールを設けることで、情報の整理が容易になります。
- 多くのクラウドストレージサービスは、ファイル名やファイル内容(PDFやOffice文書など)に対する強力な検索機能を提供しており、目的の情報に素早くアクセスできます。
- アクセス権限を設定することで、必要な担当者のみが情報にアクセスできるように管理できます。
3. 関係者間の連携強化
課題: 部署間・担当者間での情報共有不足、進捗状況の把握困難
DXによる解決策: コミュニケーションツールやタスク管理ツールを活用し、情報共有とタスクの見える化を図ります。
- 活用ツール例: Microsoft Teams, Slack, Trello, Asanaなど
- 具体的な活用方法:
- 教育・研究成果情報管理に関わる関係者(事務担当者、Web担当者、広報担当者など)を集めた情報共有チャネルやチームを作成します。
- 収集状況、公開準備の進捗、確認事項などをリアルタイムに共有することで、情報伝達の遅れを防ぎます。
- タスク管理ツールを利用し、各成果情報の管理・公開プロセスをタスク化(例: 「〇〇先生の報告書確認」「△△の成果をWebサイトに掲載準備」)し、担当者や期限を設定することで、全体の進捗状況を可視化し、管理できます。
4. 公開プロセスの効率化
課題: Webサイト更新担当への情報伝達の手間、手作業での入力・アップロード
DXによる解決策: 簡易データベースツールやCMS連携、自動化ツールなどの導入を検討します。
- 活用ツール例: Notion, Airtable(簡易データベース)、大学向けCMS、RPAツールなど(ただし、導入難易度や費用は高くなる傾向)
- 具体的な活用方法:
- 収集・整理した成果情報を簡易データベースツールで管理することで、検索や絞り込みが容易になり、公開対象の選定が効率化できます。
- 大学のWebサイト更新にCMS(コンテンツ管理システム)が導入されている場合、データベースの情報と連携できる仕組みを検討することで、手作業での入力やアップロードの手間を削減できる可能性があります。(専門部署との連携が必要)
- 定型的な情報入力やファイル移動などの作業を自動化ツール(RPAなど)で自動化することも、可能性としては考えられます。(導入には専門的な知識が必要)
DX推進のポイントと期待される効果
教育・研究成果情報管理プロセスにおけるDXを成功させるためには、以下の点に留意することが重要です。
- スモールスタート: まずは特定の学部や学科、あるいは特定の成果情報(例: 論文のみ)を対象に、オンラインフォームでの収集から試してみるなど、小さな範囲で開始し、効果を確認しながら徐々に広げることが現実的です。
- 教員・関係者への周知と協力依頼: 新しいツールやプロセスを導入する際は、教員や関係部署の担当者へ丁寧に説明し、理解と協力を得ることが不可欠です。利用マニュアルを作成するなど、サポート体制を整えることも重要です。
- ルールの明確化: どのような情報を収集するのか、ファイル名のルール、管理場所、公開基準などを明確に定めることで、プロセス全体の効率性と正確性が向上します。
- 段階的なITリテラシー向上: 利用するツールの基本的な操作方法に関する研修機会を設けたり、困ったときに相談できる環境を整備したりするなど、関係者のITリテラシー向上をサポートします。
これらの取り組みにより、教育・研究成果情報管理における事務職員の業務負担は大幅に軽減され、以下のような効果が期待できます。
- 報告書収集にかかる時間と労力の削減
- 手作業によるデータ入力ミス・ファイル管理ミスの削減
- 情報検索にかかる時間の短縮
- 関係者間での情報共有と連携のスムーズ化
- 最新かつ正確な情報を迅速に公開できる体制の構築
まとめ:DXで、より価値ある情報管理体制へ
大学の教育・研究成果情報管理は、煩雑な手続きが多く、事務職員の皆様にとって大きな負担となりがちな業務です。しかし、オンラインフォームによる収集、クラウドストレージによる一元管理、コミュニケーションツールによる連携強化といったデジタル技術の活用は、このプロセスを劇的に効率化する可能性を秘めています。
全てのツールや仕組みを一度に導入する必要はありません。まずは、ご自身の業務で最も課題と感じている部分(例: 報告書の収集)から、手軽に始められるツールを試してみてはいかがでしょうか。小さな一歩が、大学全体の情報管理体制をより効率的で信頼性の高いものへと変えていくことにつながります。
大学DX推進ラボでは、このような大学事務の具体的な課題解決に役立つ情報を提供しています。ぜひ他の記事も参考にしていただき、日々の業務効率化やDX推進のヒントとしてご活用ください。