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大学事務の問い合わせ対応が変わる!チャットボット導入の基本と活用例

Tags: 大学DX, 業務効率化, 問い合わせ対応, チャットボット, 事務効率化

大学事務における問い合わせ対応の現状と課題

大学の事務部門では、学生や教員からの多様な問い合わせに日々対応されています。履修登録、成績、証明書発行、施設予約、奨学金、システム操作、各種申請手続きなど、その内容は多岐にわたります。これらの問い合わせに対して、電話、メール、窓口など、様々なチャネルで丁寧に応対することは、大学運営において非常に重要です。

しかしながら、特に特定の期間(学期初めや試験期間など)においては、問い合わせが集中し、対応に追われる事務職員の方も多いのではないでしょうか。一つひとつの対応に時間がかかり、他の業務に手が回らない、対応漏れが発生するリスクがある、といった課題を感じている方もいらっしゃるかもしれません。また、経験の浅い職員にとっては、正確な情報伝達や適切な部署への連携が難しい場合もあります。

このような状況において、デジタル技術を活用して問い合わせ対応を効率化し、職員の負担を軽減することは、大学DXを推進する上で重要なテーマの一つです。その有効な手段の一つとして注目されているのが「チャットボット」です。

チャットボットとは何か?その基本

チャットボットとは、「チャット」(対話)と「ロボット」を組み合わせた言葉で、テキストや音声を通じて人間と自動で対話を行うプログラムのことを指します。ウェブサイト上やメッセージアプリなどで、問い合わせに対して自動で応答してくれる仕組みをご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれません。

チャットボットにはいくつかの種類がありますが、大学事務の問い合わせ対応で活用しやすいのは、事前に設定されたFAQ(よくある質問とその回答)に基づいて応答するタイプです。これは「ルールベース型」などと呼ばれ、特定のキーワードや質問のパターンを認識して、最も関連性の高い回答を提示します。複雑な質問やイレギュラーな問い合わせには対応できないことがありますが、大学事務で頻繁に寄せられる定型的な質問への対応には非常に有効です。

より高度なチャットボットには、AI(人工知能)を活用して自然な会話を理解し、学習していく「AI型」や「機械学習型」と呼ばれるものもありますが、まずは比較的シンプルで導入しやすいルールベース型から検討を始めることが現実的であると考えられます。

大学事務がチャットボットを導入するメリット

チャットボットを大学事務の問い合わせ対応に導入することで、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。

これらのメリットは、日々問い合わせ対応に追われている多くの大学事務職員にとって、業務のあり方を大きく変える可能性を秘めています。

大学事務におけるチャットボットの具体的な活用例

チャットボットは、大学内の様々な事務分野で活用が考えられます。

例えば、ある大学の教務課では、学期初めの履修登録期間中に問い合わせが殺到し、職員が疲弊している状況でした。そこで、履修登録に関するよくある質問と回答をまとめたチャットボットを導入した結果、窓口への問い合わせ件数が大幅に減少し、職員は個別の複雑なケースやシステムトラブルへの対応に集中できるようになり、業務効率が向上したという事例があります。

チャットボット導入に向けたステップと注意点

チャットボットの導入は、必ずしも大掛かりなシステム開発を伴う必要はありません。まずは小規模な範囲から試行的に始めてみることも可能です。

  1. 導入目的と対象範囲の明確化:
    • どのような課題を解決したいのか(例: 特定期間の問い合わせ集中、定型質問への対応時間削減など)を具体的にします。
    • チャットボットで対応する問い合わせの範囲を限定します。例えば、「学生からの履修登録に関する質問のみ」「証明書発行に関する質問のみ」など、スコープを絞ることから始めると取り組みやすくなります。
  2. FAQコンテンツの準備と整理:
    • 過去の問い合わせ履歴や既存のFAQリストなどを参考に、対象範囲内でよくある質問とその正確な回答を収集・整理します。これがチャットボットの「知識」となります。
    • 回答は、学生や教員に分かりやすい平易な言葉で記述することが重要です。
  3. ツールの選定:
    • 様々なチャットボット作成ツールがあります。導入の目的や予算、必要な機能(対応言語、連携機能、分析機能など)を考慮して比較検討します。
    • 大学事務職員がメンテナンスしやすい操作性であるか、ベンダーからのサポート体制はどうかなども重要な選定ポイントです。中には、プログラミング知識がなくてもGUI操作でチャットボットを作成・編集できるツールもあります。
  4. シナリオ・応答ルールの設定:
    • 準備したFAQコンテンツに基づき、どのような質問に対してどのような回答を返すか、チャットボボットのシナリオや応答ルールを設定します。
    • 利用者が想定される質問のパターン(言い回しの違いや関連キーワードなど)を考慮して設定することで、より多くの質問に正確に対応できるようになります。
  5. テストと改善:
    • 実際に運用を開始する前に、想定される様々な質問を入力してテストを行います。意図しない応答がないか、回答が正確かなどを確認します。
    • 運用開始後も、利用者のフィードバックや問い合わせログを分析し、FAQコンテンツや応答ルールを継続的に改善していくことが、チャットボットを有効活用するための鍵となります。
  6. 教職員・学生への周知:
    • チャットボットを導入したことを、学内のウェブサイトや掲示、ポータルサイトなどを通じて広く周知します。利用方法や、どのような質問に対応できるのかを分かりやすく伝えることが利用促進につながります。

チャットボットは万能ではありません。複雑な質問や個別の事情に合わせた対応が必要な場合は、最終的には職員による対応が必要です。チャットボットはあくまで一次対応や情報提供のサポートツールとして位置づけ、職員による人的対応と組み合わせることで、問い合わせ対応全体の効率化と質向上を目指すことが現実的です。

まとめ

大学事務における問い合わせ対応の効率化は、職員の負担軽減だけでなく、学生・教員の利便性向上にも直結する重要なDX推進領域です。チャットボットは、定型的な問い合わせ対応を自動化することで、この課題解決に大きく貢献する可能性を秘めています。

まずは、ご自身の部署で「どのような問い合わせが多いか」「どの問い合わせ対応に時間がかかっているか」を振り返ってみることから始めてはいかがでしょうか。よくある質問をリストアップし、それらをチャットボットで対応できないか検討してみることで、具体的な導入イメージが湧いてくることと思います。

チャットボットツールの多くは、無料トライアルを提供しています。まずは小規模なFAQを作成し、実際に操作してみることから始めてみるのも良いかもしれません。大学DXの一歩として、チャットボットによる問い合わせ対応効率化を検討されてみてはいかがでしょうか。