紙の申請手続きから卒業!大学事務のためのワークフローシステム活用術
大学事務の日常業務に潜む「紙の申請」の課題
大学の事務部門では、日々様々な申請手続きが発生します。休暇申請、出張申請、物品購入申請、あるいは教員からの研究費申請など、その種類は多岐にわたります。これらの申請の多くが、いまだに紙の書類で行われているという大学も少なくないかもしれません。
紙の申請手続きには、いくつかの課題が伴います。書類の印刷、手書きでの記入、関係部署への持ち回り、承認者の押印やサイン、そしてファイリングと保管。これらのプロセスには多くの時間と手間がかかります。また、書類の紛失や、誰の机で止まっているのか分からないといった状況も発生しやすく、進捗状況が不透明になりがちです。さらに、リモートワークが進む中で、押印のためだけに出勤する必要があるなど、柔軟な働き方を阻害する要因ともなり得ます。
これらの課題を解決し、業務効率を向上させるための有力なツールが、ワークフローシステムです。
ワークフローシステムとは
ワークフローシステムとは、社内で行われる様々な申請・承認手続きを電子化し、一連の流れ(ワークフロー)をシステム上で管理するものです。紙の申請書を電子化されたフォームに置き換え、申請から承認、却下、差し戻しといった一連のプロセスをシステム上で行うことができます。
具体的には、以下のような機能を持っています。
- 申請フォームの作成: 申請内容に合わせて必要な項目を盛り込んだフォームをシステム上で作成できます。
- 承認ルートの設定: 申請の種類や内容に応じて、誰から誰へ、どのような順番で承認を進めるかをあらかじめ設定できます。複数人による承認や条件分岐なども設定可能です。
- 申請・承認の実行: 申請者は作成したフォームに必要事項を入力して申請を提出し、承認者はシステム上で内容を確認して承認または却下を行います。
- 進捗状況の確認: 申請が現在誰のところで止まっているか、いつ承認されたかなどをリアルタイムで確認できます。
- 履歴管理: 申請、承認、差し戻しなどの全ての履歴がシステム上に記録されます。
- データ連携: 会計システムや人事システムなど、他の学内システムとの連携機能を持つものもあります。
これらの機能を活用することで、これまで紙で行っていた煩雑な手続きを、システム上でスムーズに完結させることが可能になります。
大学事務におけるワークフローシステム導入のメリット
ワークフローシステムを導入することで、大学事務の業務はどのように変わるのでしょうか。具体的なメリットをいくつかご紹介します。
- 業務効率の大幅な向上: 申請書類の作成、回覧、承認、ファイリングといった一連のプロセスにかかる時間と手間が削減されます。入力の手間を省くための自動入力機能や、過去の申請をコピーして作成する機能などがあれば、さらに効率化が進みます。
- コスト削減: 紙の消費量や印刷コストが削減できるほか、書類の保管スペースも不要になります。
- 進捗状況の可視化と透明性の向上: 申請が現在どの段階にあるのかがシステム上でいつでも確認できます。「あの書類、どこに行ったのだろう」と探す手間がなくなります。
- 紛失・誤送信リスクの低減: 紙の書類のように紛失したり、誤った相手に送付したりするリスクが大幅に減ります。
- 承認プロセスの迅速化: 承認者は場所を選ばずにシステム上で承認作業を行えるため、出張中や在宅勤務中でも承認が滞ることがありません。これにより、申請から承認までの時間が短縮されます。
- コンプライアンス強化: 申請・承認の履歴が全てシステム上に記録されるため、後からいつ、誰が、何を承認したのかを正確に追跡できます。監査対応なども容易になります。
これらのメリットは、日々の業務負担を軽減するだけでなく、事務部門全体の生産性向上にも繋がります。
大学事務での具体的な活用シーン
ワークフローシステムは、大学事務の様々な申請手続きに適用可能です。例えば以下のようなシーンで活用できます。
- 一般的な申請:
- 休暇届、早退・遅刻届
- 残業申請
- 出張申請・精算
- 通勤経路変更申請
- 物品・費用関連申請:
- 備品購入申請
- 消耗品購入申請
- 経費精算申請
- 教員・学生関連申請:
- 証明書発行申請(システム連携が必要な場合も)
- 研究費執行申請
- 非常勤講師等謝金支払申請
- 会議室利用申請
これらの申請をワークフローシステムに乗せることで、関係者間のスムーズな情報伝達と迅速な承認プロセスを実現できます。特に、これまで教員が手書きで作成・押印していた申請書を電子化できれば、教員の負担軽減にも繋がり、教育・研究活動に集中できる環境整備の一助となります。
導入検討のポイントと進め方
ワークフローシステムの導入を検討するにあたり、いくつかのポイントがあります。
- 現状業務の棚卸しと課題の明確化: どの申請手続きを電子化したいのか、現在の紙でのプロセスでどのような課題があるのかを具体的に洗い出すことから始めます。
- 必要な機能の検討: フォーム作成の柔軟性、複雑な承認ルート設定の可否、他の学内システムとの連携機能、モバイル対応など、自学に必要な機能をリストアップします。
- 使いやすさ: 実際にシステムを利用する事務職員だけでなく、承認者となる教員も含め、誰もが直感的に操作できるかどうかが定着の鍵となります。
- セキュリティとサポート体制: 重要な情報を取り扱うため、システムのセキュリティ対策は必須です。導入後のサポート体制も確認しておきましょう。
- 導入範囲の検討: 全学一斉に導入するのではなく、まずは特定の部署や申請種類に限定してスモールスタートで始めることも有効な方法です。
導入のステップとしては、まず課題を抱える申請プロセスを一つ選び、その電子化を試行してみるのが良いでしょう。システムベンダーによってはトライアル利用が可能な場合もありますので、実際に操作感を試してみることを推奨します。並行して、システム利用に関する簡単なマニュアルを作成したり、操作説明会を実施したりすることも、スムーズな導入には不可欠です。
まとめ:ワークフローシステムがもたらす大学事務の未来
ワークフローシステムは、単に紙の申請をシステムに置き換えるだけでなく、大学事務の働き方そのものを変革する可能性を秘めています。時間の短縮、コストの削減、透明性の向上といった直接的なメリットに加え、これまで申請業務に追われていた時間を、より創造的で付加価値の高い業務に充てることが可能になります。
DXと聞くと難しく感じられるかもしれませんが、ワークフローシステムの導入は、日々の業務に直結する身近なDXの一歩です。ぜひ、あなたの大学でも紙の申請手続きの見直しから、デジタル化による業務効率化への第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。