教員への情報提供・書類依頼を効率化!大学事務のためのデジタルツール活用法
大学事務における教員との情報連携の現状と課題
大学の運営において、事務職員と教員の連携は非常に重要です。学生対応、研究支援、各種申請手続きなど、多岐にわたる業務で頻繁な情報共有や書類のやり取りが発生します。しかし、これらの業務は未だに紙媒体での回覧や提出、あるいはメールでの個別連絡に頼っているケースが多く見られます。
例えば、以下のような課題を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
- 重要な情報がメールに埋もれてしまい、教員への周知が徹底できない。
- 書類提出依頼の締め切り管理や未提出者の催促に多くの時間がかかる。
- 提出された書類の確認や整理に手間がかかり、紛失のリスクもある。
- 手続きに関する教員からの問い合わせに個別に回答する必要がある。
- 最新の規則や様式を探すのに時間がかかる。
これらの課題は、事務職員だけでなく、情報を受け取る教員側にも負担を強いる可能性があります。情報伝達の遅れやミスの原因となり、大学全体の業務効率低下にもつながりかねません。
DXによる情報提供・書類依頼プロセスの変革
こうした課題を解決し、大学事務と教員間の連携をよりスムーズにするために、デジタルツールの活用(DX)が有効です。デジタルツールを導入することで、情報共有の一元化、書類提出プロセスの自動化、コミュニケーションの効率化などが実現できます。
具体的なDXによる変化の方向性はいくつか考えられます。
- 情報共有基盤の構築: 最新情報や共通の書類様式を誰もが必要な時にアクセスできる場所に集約します。
- 申請・依頼プロセスのデジタル化: 書類の提出依頼や情報収集をオンラインフォームやワークフローシステムで行い、進捗管理や集計を効率化します。
- コミュニケーションチャネルの最適化: 連絡内容に応じて、メール、チャット、共有フォルダなどを使い分けることで、情報の埋もれを防ぎ、迅速な確認を可能にします。
次に、これらの変革を実現するために、具体的にどのようなデジタルツールが役立つのか、その活用例とともにご紹介します。
教員との連携を効率化するデジタルツールとその活用例
大学内で既に導入されている、あるいは導入検討が進められている可能性のあるツールの中にも、教員との情報連携に活用できるものが多くあります。
1. 情報共有・ファイル共有ツール (クラウドストレージ、グループウェア)
Microsoft SharePoint、Google Drive、Boxといったクラウドストレージサービスや、学内グループウェアのポータル機能は、教員向けの共通情報や頻繁に利用する書類様式を共有するのに適しています。
- 活用例:
- 教員向けに「各種申請様式」「研究費関連情報」「学内規程集」といった共有フォルダを作成し、常に最新版のファイルを置いておく。
- フォルダやファイルごとにアクセス権限を設定し、必要な教員だけが見られるようにする。
- 重要な通知や会議の案内などを、共有フォルダ内の文書としてアップロードし、リンクを周知する。
- 学内グループウェアのポータル機能を使って、教員向けのお知らせ欄を設置し、一元的に情報発信する。
これにより、教員は必要な情報を自分で探すことができ、事務職員への問い合わせを減らすことができます。
2. オンラインフォーム作成ツール
Google Forms、Microsoft Forms、あるいは多くのグループウェアに搭載されているフォーム機能は、教員からの情報収集や簡単な書類提出依頼に非常に有効です。
- 活用例:
- 会議の出欠確認、研修参加希望者の募集をフォームで行う。
- アンケートを実施し、集計作業を自動化する。
- 簡単な証明書発行申請や備品購入申請などをフォームで受け付ける。
- 特定の情報(例: シラバス更新情報の提出依頼)をフォームで行い、入力されたデータをスプレッドシートなどに自動で集計する。
フォームを活用することで、紙の配布・回収の手間や、メールでバラバラに届く情報をまとめる作業が不要になり、集計や進捗管理が格段に楽になります。
3. ワークフローシステム
学内で既に導入されている、あるいは導入検討が進んでいるワークフローシステムは、より複雑な申請や承認プロセスをデジタル化するのに役立ちます。(※ワークフローシステムについては、別の記事で詳しく解説しています。)
- 活用例:
- 教員からの研究費申請や出張申請などをシステム上で受け付け、事務担当者や学部長など関係者間の承認プロセスを自動化・可視化する。
- 稟議書や休暇届などの提出・承認をシステム上で行い、紙での回覧や押印を不要にする。
ワークフローシステムを使うことで、申請書類の紛失や確認漏れを防ぎ、現在の承認状況をいつでも確認できるようになります。
4. コミュニケーションツール (チャットツール)
Microsoft TeamsやSlackといったチャットツールは、教員とのリアルタイムに近い情報共有や、特定のテーマに関する意見交換に有効です。(※これらのツールについては、別の記事でも活用法を紹介しています。)
- 活用例:
- 部署やプロジェクトごとにチャネルを作成し、関連する教員と事務職員が参加して情報交換を行う。
- 個別の教員への簡単な確認や情報提供をチャットで行う。
- 会議の議事録や関連ファイルをチャネル内で共有する。
- 特定の依頼に関する質問を受け付けるチャネルを用意する。
ただし、重要な公式通知や記録として残すべき連絡については、メールや学内ポータルなど、用途に応じた使い分けが必要です。
デジタルツール活用の第一歩を踏み出すには
これらのツールは、導入するだけで効果が出るわけではありません。実際に教員の皆様に使っていただき、連携プロセスを円滑にするためには、いくつかのステップを踏むことが重要です。
- 現状の課題を洗い出す: 事務職員側だけでなく、教員側が感じている情報連携上の不便さもヒアリングし、共通の課題を特定します。
- 小さく始める(スモールスタート): 全ての業務を一度にデジタル化するのではなく、特定の部署や、多くの教員が関わる特定の申請プロセスなど、改善効果が見えやすい部分から試験的に導入します。
- 教員への丁寧な説明とサポート: 新しいツールの導入にあたっては、なぜ導入するのか、使うことでどんなメリットがあるのかを丁寧に説明し、操作方法に関する簡単なマニュアルを作成したり、説明会を実施したりすることが効果的です。
- フィードバックを収集し改善する: 実際にツールを使ってみた教員からのフィードバックを収集し、使いにくい点や改善点があれば反映させていきます。
例えば、ある大学では、それまで紙とメールで行っていた各種証明書発行申請をオンラインフォームに切り替えたことで、事務側の申請受付・集計作業が大幅に削減され、教員側もいつでもどこからでも申請できるようになったという事例があります。最初は一部の証明書から開始し、教員への説明会と簡易マニュアル配布、問い合わせ窓口設置といった丁寧な対応を行ったことが成功につながったとのことです。
まとめ:デジタルツールで教員との連携を強化し、業務効率を向上
大学事務における教員への情報提供や書類依頼業務は、デジタルツールの活用によって飛躍的に効率化できます。クラウドストレージでの情報一元化、オンラインフォームでの書類提出依頼、ワークフローシステムでの申請プロセス自動化、チャットツールでの円滑なコミュニケーションなど、それぞれの目的に合ったツールを選ぶことが重要です。
導入にあたっては、いきなり全てを変えるのではなく、現状の課題を丁寧に分析し、効果の見えやすい部分から小さく始めることが成功の鍵となります。そして、何よりも、ツールを利用する教員の皆様への丁寧な説明とサポートを心がけ、共に新しい働き方を作り上げていく姿勢が大切です。
まずは、日々の業務の中で教員との情報連携に最も時間がかかっている部分、最も課題を感じている部分は何なのかを改めて振り返ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。