大学事務の休学・退学・復学手続きを効率化:書類・連絡負担を減らすDXヒント
大学事務の業務には多岐にわたる手続きが含まれますが、中でも学生の休学、退学、そして復学に関する手続きは、関係部署が多く、必要な書類や確認事項が煩雑になりがちです。これらの手続きの効率化は、多くの大学事務において重要な課題の一つとなっています。
休学・退学・復学手続きにおける大学事務の課題
これらの学生手続きには、以下のような課題が伴うことが多いです。
- 紙ベースの申請と承認: 学生からの申請書類の配布、記入、提出、そして関係部署や教員による承認のための回覧・押印が必要で、時間と手間がかかります。
- 進捗状況の管理: 申請書類が現在どの段階にあるのかを追跡することが難しく、学生や保護者からの問い合わせに対応する負担が発生します。
- 関係部署間の連携: 学部、学務部、教務部、財務部、国際交流部など、複数の部署が関与する場合が多く、部署間の情報共有や連携に遅れや漏れが生じやすい構造です。
- 学生・保護者との連絡: 書類の不備、追加提出依頼、承認状況の連絡など、学生や保護者への連絡業務に多くの時間を要します。
- 書類の保管と検索: 承認済みの書類の整理、保管、そして必要に応じた過去書類の検索に労力がかかります。
これらの課題は、事務職員の業務負担増大だけでなく、手続きの遅延、人的ミス、そして学生・保護者の満足度低下につながる可能性があります。
DXによる休学・退学・復学手続きの効率化
これらの課題を解決し、休学・退学・復学手続きを効率化するために、デジタル技術(DX)の活用が有効です。具体的なDXの進め方とその効果をご紹介します。
1. 申請手続きのオンライン化
まず、学生からの申請を受け付けるプロセスをオンライン化します。
- オンラインフォームの活用: Google FormsやMicrosoft Formsなどの汎用的なフォーム作成ツール、あるいは大学が導入しているポータルサイトの機能などを活用し、申請情報をオンラインで受け付けます。これにより、申請書の配布・回収の手間や記入漏れ・不備の削減が期待できます。
- 申請書類のアップロード機能: 診断書や証明写真など、添付が必要な書類はフォームから直接アップロードできるようにします。
2. 承認・回覧プロセスのデジタル化
申請があった後の学内での承認・回覧プロセスをシステム化します。
- ワークフローシステムの導入: 申請者(学生)、担当部署、教員、学部長、関係部署といった承認経路をシステム上で設定し、申請情報の入力から承認、最終処理までを一元管理します。これにより、書類の物理的な回覧や押印が不要になり、手続きのスピードアップとペーパーレス化が実現します。多くのワークフローシステムは、承認状況をリアルタイムで確認できる機能を備えています。
- 共有ストレージの活用: 関係者間で申請書類や関連情報を共有するために、クラウドストレージ(Google Drive, OneDrive, SharePointなど)を活用します。アクセス権限を設定することで、情報セキュリティを保ちつつ、必要な情報にいつでもアクセスできるようになります。
3. 関係部署間連携の強化
ワークフローシステムや共有ストレージを活用することで、部署間の連携がスムーズになります。
- 情報の一元化: 手続きに関する全ての情報がシステム上や共有ストレージに集約されるため、「あの書類はどこ?」「この件は誰に聞けば?」といった情報探索の時間が削減されます。
- 進捗状況の可視化: 各担当者がシステム上で自分のタスクを確認し、完了状況を更新することで、全体の進捗状況が明確になります。
4. 学生・保護者との連絡効率化
連絡が必要なタイミングでの通知や情報提供を効率化します。
- システム連携による自動通知: ワークフローシステムとメールシステムや大学ポータルを連携させることで、申請受付完了、承認状況の変更、追加書類提出依頼などを自動で学生や保護者に通知できます。
- FAQの整備: よくある質問とその回答をまとめたFAQを大学ウェブサイトやポータルサイトに掲載することで、簡単な問い合わせへの対応負担を軽減できます。
5. 書類管理とデータ活用
デジタル化された申請書類や手続きデータを効率的に管理し、活用します。
- デジタルでの一元管理: 承認済みの申請書類や関連データはクラウドストレージや学内システム内で一元管理します。物理的な保管スペースが不要になり、検索性も向上します。
- データ分析への活用: 蓄積された申請データを分析することで、特定の時期に申請が増加する傾向や、手続きに時間がかかるボトルネックなどを特定し、業務改善に役立てることも可能です。
DX推進のためのヒント
これらのDXを進めるにあたっては、いきなり全てをデジタル化するのではなく、以下のようなステップを踏むことが有効です。
- 現状業務の洗い出し: まずは現在の休学・退学・復学手続きの具体的な流れ、関わる担当者・部署、使用している書類、発生している課題を詳細に書き出します。
- 小さく始める: 全ての手続きを一度にオンライン化するのではなく、例えば「休学申請だけ」「特定の学部の手続きだけ」のように範囲を限定して試行導入し、効果を検証します。
- 関係者との連携: 学生、教員、関係部署の担当者と密に連携を取り、システムの操作方法説明や、新しいフローへの理解を促します。
- ツールの選定: 既存の学内システムとの連携可能性や、利用している他のクラウドサービスとの親和性も考慮して、最適なツールを選定します。
まとめ
学生の休学・退学・復学手続きの効率化は、大学事務職員の負担軽減、学生・保護者の利便性向上、そしてより円滑な学内運営に貢献します。紙ベースの煩雑な作業をデジタル化することで、時間のかかる定型業務から解放され、より付加価値の高い業務に集中できるようになるでしょう。
DXは難しい技術を導入することだけではありません。日々の業務フローを見直し、「どうすればもっと楽になるか?」を考え、身近なデジタルツールから活用を始めてみることも、重要な一歩です。まずは、現在最も負担に感じている部分に焦点を当て、どのようなツールや仕組みが役立つかを検討してみてはいかがでしょうか。