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大学事務のための個人情報保護入門:押さえておきたい基本とDXでの注意点

Tags: 個人情報保護, データプライバシー, 情報セキュリティ, 大学DX, 事務効率化

はじめに:大学事務における個人情報管理の重要性

大学事務の業務には、多くの学生や教職員の個人情報が不可欠です。氏名、住所、連絡先、成績、健康情報、採用情報など、機微な情報を取り扱う機会が日常的にあります。これらの情報は、大学運営の根幹をなすものであると同時に、ひとたび漏洩すれば、関係者の信頼失墜や法的な問題に発展する可能性を秘めています。

デジタル化が進む現代において、個人情報の管理方法は大きく変化しています。紙媒体での管理から、パソコン内のファイル、共有ストレージ、各種クラウドサービスへと移行することで、業務効率は向上しますが、同時に新たなセキュリティリスクも生まれます。大学のデジタル変革(DX)を安全に進めるためには、個人情報を適切に管理するための基本的な知識と、デジタル環境特有の注意点を理解しておくことが非常に重要です。

本稿では、大学事務の皆様が個人情報を安全に取り扱うために押さえておくべき基本と、DXを推進する上で特に気をつけたい点について解説します。

大学事務が扱う主な個人情報とは

大学事務が日常的に扱う個人情報には、以下のようなものがあります。

これらの情報は、業務上必要な範囲で適切に取得、利用、保管、提供、廃棄されなければなりません。

個人情報保護の基本原則

個人情報保護法や関連法令に基づき、個人情報を取り扱う上で共通する基本的な原則があります。

  1. 利用目的の特定と通知/公表: 個人情報を取得する際は、その利用目的をできる限り具体的に特定し、本人に通知または公表する必要があります。目的外の利用は原則禁止です。
  2. 適正な取得: 偽りや不正な手段で個人情報を取得してはいけません。
  3. 正確性の確保: 利用目的の達成に必要な範囲内で、個人データを正確かつ最新の内容に保つ必要があります。
  4. 安全管理措置: 個人データの漏洩、滅失、毀損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じる必要があります。これがDX推進において特に重要となる点です。
  5. 第三者提供の制限: 本人の同意なく個人データを第三者に提供することは原則禁止されています。
  6. 開示・訂正・利用停止等の請求への対応: 本人から自身の個人データについて開示、訂正、利用停止等の請求があった場合、適切に対応する必要があります。

これらの原則を遵守することが、個人情報を安全に管理するための出発点となります。

DX推進における個人情報保護の注意点

デジタルツールやオンラインサービスの導入は、業務効率を大きく改善しますが、個人情報管理においては新たな課題も生じます。特に以下の点に注意が必要です。

具体的な安全管理対策例

DXを安全に進めるために、大学事務として実施できる具体的な対策には以下のようなものがあります。

  1. アクセス権限の最小化: 個人情報を含むファイルやシステムへのアクセス権限は、業務上必要な職員だけに限定します。定期的に権限の見直しを行います。
  2. データの暗号化: パソコンのハードディスク、持ち運び可能な記録媒体(USBメモリなど)、クラウドストレージに保存するデータは、可能であれば暗号化します。特に学外に持ち出すデータには厳重な注意が必要です。
  3. 定期的なバックアップと復旧訓練: 万が一のデータ消失やシステム障害に備え、個人情報のバックアップを定期的に取得し、復旧できるかどうかの確認や訓練を行います。
  4. 不要な個人情報の削除: 利用目的を達成した個人情報は、定められたルールに従って速やかに、かつ確実に削除または廃棄します。デジタルデータの場合、単にゴミ箱に入れるだけでなく、復元できない方法で削除する必要があります。
  5. セキュリティ研修の実施: 全ての教職員に対し、個人情報保護の重要性、情報セキュリティに関する基本的な知識、具体的なツールの安全な利用方法などについて、定期的に研修を実施します。
  6. インシデント対応計画の策定: 万が一、情報漏洩やシステム障害が発生した場合の連絡体制、被害拡大防止策、関係機関への報告、再発防止策などをあらかじめ定めておきます。

これらの対策は、一度行えば終わりではなく、組織全体の取り組みとして継続的に実施していく必要があります。

まとめ:安全な環境でDXを推進するために

大学事務における個人情報管理は、単に法令を遵守するだけでなく、学生や教職員からの信頼を維持し、教育・研究活動を支える上で不可欠な基盤です。DX推進は業務効率化の大きなチャンスですが、同時に個人情報管理におけるリスクも高まります。

新しいツールを導入する際には、そのツールのセキュリティ機能やプライバシー設定を十分に確認し、大学全体のセキュリティポリシーに則っているかを確認することが重要です。また、システムやツールの操作に不慣れな職員がいる場合は、丁寧な研修やサポート体制を構築し、組織全体のセキュリティ意識を高めることも不可欠です。

個人情報保護は、特定の担当者だけが担うのではなく、大学で働く全ての人が意識し、日々の業務で実践していくべきものです。安全な環境でデジタル化を進めることが、真に効果的な大学DXへと繋がります。もし、ご自身の部署での個人情報管理について不安な点があれば、まずは情報システム部門や個人情報保護を担当する部署に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。

本稿でご紹介した内容が、大学事務の皆様が個人情報を安全に管理し、安心してDXに取り組むための一助となれば幸いです。