大学事務の押印・署名業務が変わる!電子署名・電子契約の基本と活用例
大学事務における押印・署名業務の課題
大学の事務職員の皆様は、日々の業務の中で多くの書類に押印や署名が必要となる場面に直面されていることと思います。例えば、学生の申請書類、教職員の各種手続き、外部機関との契約書など、多岐にわたります。これらの押印・署名に関わる業務には、次のような課題が挙げられます。
- 時間と場所の制約: 押印や署名のためだけに特定の場所へ移動したり、承認者の不在によって手続きが滞ったりすることがあります。特にリモートワークが普及した現在、この課題はより顕著になっています。
- 紙の管理コスト: 紙の書類は印刷、押印、封入、郵送、そして保管にコストと手間がかかります。また、紛失や劣化のリスクも伴います。
- 煩雑な手続き: 複数の承認者が必要な場合、書類を持ち回ったり、郵送でやり取りしたりと、手続きが煩雑になりがちです。
- 進捗の確認が難しい: 書類が今どこにあるのか、誰の承認待ちなのか、状況を把握しにくい場合があります。
これらの課題は、事務職員の皆様の業務効率を低下させ、本来注力すべき業務から時間を奪っています。大学DXを進める上で、このような伝統的な手続きを見直すことは非常に重要です。
電子署名・電子契約とは
大学の押印・署名業務の課題を解決する有効な手段の一つが、「電子署名」やそれを用いた「電子契約」の導入です。
電子署名とは、電磁的記録(電子ファイル)に対して行われる措置であり、主に以下の2つの機能を持っています。
- 本人性の証明: その電子ファイルが、間違いなく本人の意思に基づいて作成・承認されたものであることを証明します。
- 非改ざん性の証明: その電子ファイルが、電子署名が付与された後に改ざんされていないことを証明します。
これにより、紙の書類における署名や押印と同等、あるいはそれ以上の信頼性を電子ファイルに付与することができます。電子署名が施された電子ファイルは、多くの場合、紙の書類と同じように法的な有効性が認められます(対象となる書類の種類や法律によって異なる場合があります)。
電子契約とは、この電子署名を用いて行う契約締結の方法です。紙の契約書に押印・署名する代わりに、電子ファイル(PDFなど)に電子署名を付与することで契約を締結します。
電子署名・電子契約で大学事務業務はどう変わるか
電子署名・電子契約の導入は、大学事務の皆様の業務に多くのメリットをもたらします。
- 業務の迅速化: 書類の回覧や郵送にかかる時間が不要になり、手続きが大幅にスピードアップします。場所に縛られずに手続きを進めることができます。
- コスト削減: 紙の印刷代、郵送費、保管スペースにかかるコストを削減できます。
- 管理の効率化: 電子ファイルとして一元管理できるため、書類の検索や整理が容易になります。過去の書類も簡単に見つけ出すことができます。
- コンプライアンス・セキュリティの向上: 電子署名による非改ざん性の証明やタイムスタンプの付与により、書類の信頼性が向上します。また、アクセス権限の設定などにより、紙よりも厳格なセキュリティ管理が可能になります。
- 進捗の可視化: 多くの電子契約サービスには、書類の送付状況や承認状況を確認できる機能があり、業務の進捗管理が容易になります。
これらのメリットは、特に申請・承認業務や外部との契約締結が多い部署で大きな効果を発揮するでしょう。
大学事務での具体的な活用例
電子署名・電子契約は、大学事務の様々な場面で活用が期待できます。
- 学生関連手続き: 各種証明書の発行申請、休学・退学届、奨学金申請書類など、学生から提出される書類の電子化と電子署名による承認。
- 教職員関連手続き: 旅費精算申請、休暇届、兼業申請、物品購入申請など、教職員が提出する各種申請書の電子化と承認ワークフローへの組み込み。
- 契約書: 業者との業務委託契約、備品購入契約、共同研究契約など、外部との契約締結における電子契約の導入。
- 協定書・覚書: 他大学や研究機関との連携協定など、学外との合意形成に関する書類への電子署名。
- 学内規程・通知: 理事会決定事項や重要な通知など、回覧・承認が必要な学内文書への電子署名。
これらの例は一部ですが、現在紙と押印・署名で行われている手続きの多くを電子化できる可能性があります。
電子署名・電子契約導入への第一歩
「自分の部署でも導入してみたいけれど、何から始めれば良いのか分からない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。まずは、以下のステップを参考に、導入検討を進めてみてはいかがでしょうか。
- 課題の特定と目標設定: どの業務の非効率性を最も改善したいのか、導入によってどのような状態を目指すのか(例: 特定の申請手続きの完了時間を半分にする、紙の書類を〇〇%削減するなど)を具体的にします。
- 情報収集: 電子署名や電子契約に関する基本的な情報を集めます。法的な有効性、セキュリティ、サービスの種類(クラウド型が一般的です)、必要な機能などを理解します。
- 対象業務の選定: 最初から全ての業務に導入しようとせず、効果が見えやすく、関係部署も比較的少ない業務(例: 特定の学内申請、部署内の承認プロセスなど)を選んで小さく始めることを検討します。
- サービスの比較検討: 提供されている様々な電子契約サービスや、学内で利用しているグループウェアなどに搭載されているワークフロー・電子署名機能を比較します。使いやすさ、費用、セキュリティレベル、他のシステムとの連携可能性などを評価します。
- 関係部署との連携: 法務部、情報システム部、対象業務に関連する部署など、関係各所と連携を取りながら検討を進めます。特に法的な取り扱いやシステムの連携については専門部署との協力が不可欠です。
- 規程・ルールの整備: 電子契約の導入に伴い、学内の規程や業務フローの見直しが必要となる場合があります。
導入時の注意点
電子署名・電子契約の導入を成功させるためには、いくつかの注意点があります。
- 関係者への説明と理解促進: 利用する教職員や学生、外部の関係者に対して、導入の目的やメリット、使い方を丁寧に説明し、理解と協力を得ることが重要です。
- 操作の習得支援: 新しいツールの操作に不慣れな方向けに、マニュアル作成や講習会の実施など、操作を習得するためのサポート体制を整えることが望ましいです。
- 段階的な導入: 一度に大規模な変更を行うのではなく、選定した一部の業務から段階的に導入し、課題を特定・改善しながら対象業務を広げていくアプローチが有効です。
- 例外対応の検討: 全ての書類や状況が電子化できるわけではない場合もあります。紙媒体での対応が必要なケースや、例外が発生した場合の対応ルールをあらかじめ定めておくことも大切です。
まとめ
大学事務における押印・署名業務の電子化は、単に紙をなくすだけでなく、業務効率の大幅な向上、コスト削減、そして場所や時間にとらわれない働き方の実現に貢献する重要なDX推進の一歩です。
「新しいツールは難しそう」「何から始めたら良いか分からない」と感じている方も、まずはご自身の業務の中で「この押印、電子でできたら楽なのに」と思う場面を思い浮かべてみてください。そこから、電子署名・電子契約の活用を検討し始めることで、日々の業務がよりスムーズで快適になる可能性を感じていただけるのではないでしょうか。
このテーマに関心を持たれた方は、ぜひ関連情報の収集や、学内の情報システム部署への相談など、次のステップに進んでみてください。大学DXは、皆様一人ひとりの業務改善の積み重ねによって実現されていきます。