大学評価対応を効率化!大学事務のためのデータ管理・分析DX入門
大学評価対応におけるデータ業務の課題
大学の運営において、認証評価や学部学科の第三者評価、さらには競争的資金の申請準備など、様々な外部評価への対応は欠かせない業務です。これらの評価準備では、教育研究活動に関する多岐にわたるデータを収集し、定められた形式で整理・分析し、報告書を作成する必要があります。
このプロセスにおいて、大学事務職員の皆様は以下のような課題に直面することが少なくありません。
- 分散したデータの収集: 学生情報、教員業績、研究費、施設利用状況など、必要なデータが学内の様々な部署やシステムに分散しており、収集に手間がかかります。
- データの形式不統一: 各部署やシステムから提供されるデータの形式が統一されておらず、集計・分析のために手作業で整形する作業が発生します。
- 手作業による集計・分析: Excel等を用いて手作業でデータを集計・分析する場合、入力ミスや計算式の誤りが発生するリスクがあり、正確性の担保に神経を使います。
- 報告書作成の手間: 集計・分析したデータを基に報告書を作成する際、グラフ作成や記述の調整に時間がかかり、データ更新のたびに作業が発生します。
- 限られた時間での対応: 評価対応の時期は他の業務と重なることも多く、時間的制約の中で効率的に作業を進める必要があります。
これらの課題は、事務職員の皆様の負担を増大させ、評価対応の品質にも影響を与えかねません。しかし、デジタル技術(DX)を適切に活用することで、これらのデータ業務を効率化し、負担を軽減することが可能です。
DXで変わるデータ業務:効率化の可能性
大学評価対応におけるデータ収集、管理、分析、報告といった一連のプロセスにDXを取り入れることで、以下のような効率化が期待できます。
- データ収集の仕組み化: アンケートや特定の情報収集が必要な場面で、オンラインフォームを活用することで、最初から集計しやすい形式でデータを収集できます。
- データの一元管理と共有: 複数の部署からのデータを一箇所に集約し、関係者が必要に応じてアクセス・編集できる仕組みを構築します。これにより、最新のデータを常に共有できます。
- データ整理・集計の自動化: スプレッドシートの関数や機能、あるいは連携ツールを活用することで、手作業で行っていたデータ整形や集計の一部を自動化できます。
- 分析・可視化の効率化: 集計・分析したデータをグラフ等で分かりやすく可視化する作業を効率化し、報告書作成の手間を減らします。
具体的なツールと活用ヒント
新しいシステムを導入せずとも、現在多くの大学で利用されている身近なツールを活用することで、評価対応のデータ業務を効率化できます。
1. データ収集の効率化:オンラインフォームの活用
教員の研究業績情報、学生の学習状況に関するデータ、特定の取り組みに関するアンケートなど、評価に必要な情報を学内から収集する際に、Google FormsやMicrosoft Formsといったオンラインフォームツールが役立ちます。
- 活用例:
- 教員に特定の研究成果や社会貢献活動に関する情報を入力してもらうフォームを作成し、自動で回答をスプレッドシートに集約する。
- 学生向けに授業改善や施設利用に関するアンケートを実施し、評価報告に必要なデータを収集する。
フォームを利用することで、手書きやWordで収集していた情報のデータ化の手間を省き、最初から集計しやすい構造でデータを集めることができます。
2. データ管理・整理・集計:スプレッドシートの高度な活用
Google SheetsやMicrosoft Excelは、単なる表計算ツールとしてだけでなく、データ管理・集計の中心的なツールとして活用できます。特に共同編集機能を持つGoogle Sheetsは、複数担当者でのデータ集約・管理に適しています。
- 活用例:
- 各部署から提供されたデータを一つのスプレッドシートに集約し、評価項目ごとにシートを分けて管理する。
VLOOKUP
関数やINDEX+MATCH
関数を使って、異なるシートやファイルから必要なデータを自動的に参照・結合する。SUMIFS
、COUNTIFS
、AVERAGEIFS
などの条件付き集計関数を使って、特定の条件を満たすデータを効率的に集計する。- ピボットテーブル機能を使って、複雑なクロス集計やサマリー表を素早く作成し、様々な角度からデータを分析する。評価報告書で求められる形式に合わせてデータを集計する際に非常に有効です。
- FILTER関数(Google Sheetsなど)やSORT関数などを使って、必要なデータだけを抽出・並べ替える。
これらの機能を活用することで、手作業でのコピー&ペーストや並べ替え、電卓での計算といった作業を大幅に削減し、ミスを防ぐことができます。
3. データの可視化:グラフ機能の活用
集計・分析したデータは、評価報告書においてグラフや図表を用いて視覚的に示すことが求められます。スプレッドシートのグラフ作成機能も十分に役立ちます。
- 活用例:
- 学生数の推移、教員一人あたりの論文数、獲得した研究費の金額などを折れ線グラフや棒グラフで表示する。
- アンケート結果の割合を円グラフや帯グラフで示す。
- 作成したグラフをWordやPowerPointの報告書に貼り付け、視覚的に分かりやすい資料を作成する。
DX推進のステップと注意点
評価対応のデータ業務におけるDXを始めるにあたっては、以下のステップと注意点を踏まえることが重要です。
- 現状の課題を明確にする: 評価対応の準備において、どのようなデータ収集、加工、集計作業に最も時間や労力がかかっているか、ミスが発生しやすい部分はどこかなど、具体的な課題を洗い出します。
- 小さな成功を目指す: いきなり全てのデータ業務をデジタル化しようとせず、最も効果が見込めそうな一部のプロセスからDXを導入します。例えば、「特定のアンケート回答の収集をフォーム化する」といった小さな取り組みから始めます。
- 既存ツールの可能性を探る: Office 365やGoogle Workspaceなど、大学がすでに契約しているツールに含まれる機能(Forms, Sheets/Excel, Drive/OneDriveなど)で何ができるかを確認します。多くの場合、高度な機能を活用することで効率化が可能です。
- 情報システム部門と連携する: 新しいツールの導入や、既存システムとの連携が必要になる場合は、情報システム部門に相談します。セキュリティや学内規程に沿った適切な対応をサポートしてもらえます。
- データセキュリティに配慮する: 評価関連データには機密性の高い情報や個人情報が含まれる場合があります。データの保管場所、アクセス権限の設定、共有範囲など、セキュリティには十分配慮する必要があります。
まとめ
大学評価対応におけるデータ収集・整理・分析業務は、多くの事務職員の皆様にとって大きな負担となりがちです。しかし、オンラインフォームによる収集、スプレッドシートの高度な機能活用、クラウドストレージでの一元管理といったDXの手法を取り入れることで、これらの業務を効率化し、より正確かつ迅速な対応が可能になります。
まずは、現在抱えているデータ業務の課題を具体的に把握し、身近にあるツールを活用した小さな一歩から始めてみてはいかがでしょうか。効率化によって生まれた時間や労力を、より質の高い評価報告書の作成や、他の重要な業務に充てられるようになるはずです。ぜひ、できるところからDXによる業務改善に取り組んでみてください。